市協「教育・保育部会」を開催

 

〜学校現場でのLGBT対応と、市営保育所の民間移管について〜

 

 

   

 

 87日(水)、部落解放センターで市協「教育・保育部会」が開催され、部員6人が参加し、京都市からは教育委員会事務局学校指導課 土屋諭 担当課長 堀出みゆき首席指導主事(小学校担当)、子ども若者はぐくみ局幼保総合支援室、村上文彦公営保育所業務推進課長、文化市民局共生社会推進室、伊藤洋康事業調整担当課長が参加し、教育委員会からは「LGBTに対する学校現場の対応」、幼保総合支援室からは「市営保育所の民間移管の状況について」の説明を受けました。

 双方自己紹介の後、冒頭、宮崎議長があいさつし「先日障害者差別解消法における支援協議会の事例などを学んだが、教育現場における人権課題も多くあり、今日はLGBTについて説明をもらうが、委員会としての対応を聞きたい。保育所については、民営化の現状お聞きしたいのと、千本地区での移転計画についても気になっているのでお願いしたい」と述べました。

 教育委員会土屋課長からの説明は以下のとおりです。

 「教育委員会では昨年度1年間をかけて、『人権教育をすすめるにあたって』という指針の一部改訂を行っているが、これは『人権3法』や新たな課題としてLGBT等の人権問題を追記するということ。国レベルではH272015年)4月に「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細やかな対応等の実施について」と、H282016)年4月に「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細やかな対応等の実施について」と、二つの通知がでている。基本的な考え方は、性的少数者がいるという前提で、子どもたちが相談しやすい環境を整えること。小学生の段階ではっきりとカミングアウトするということは、実はあまり聞いたことがなく、中学校ぐらいになると、どうもそうかな、というふうに感じる先生も出てくるが、そういう場合も学校サイドはしっかりと見守りをする。個別に具体的な話があったら本人や保護者と対応し、具体的にどういった対応をしてほしいか確認していくのが、今の対応の現状。そのうえで、実例だが、小学校6年の道徳の学習で「偏見をなくすには」という学習で、LGBT等の方の生き方から感じたことを話し合い、考えさせる授業。また、保健体育の授業として「心と体のつながり」で、自分の体と心の感覚が一致していない人もおり、そのような人は身近にいることを学んだ。また、小学校高学年の総合の学習の時間に、生物学的な性別、性自認、性的指向について、体、心、好きになる人が別々になることがあることを学ぶ、また、性がグラデーションのように、明確にならないことを伝えたという実例がある。

配慮の事例としては、更衣の際に保健室などの別室を利用。また職員トイレや、多目的トイレの利用、また、中学校の多くでスラックスを選択できるようにしている。LGBT差別の特徴として、本人が親に言えないという特徴があるので、保護者啓発として、小学校6年生保護者向け啓発冊子『思春期のこどもの心と親のかかわり』(20166月発行)において、多様な性の在り方やLGBTの子どもへの対応について記載し、研修を実施している学校も1割程度だがある。

政府答弁から、文科省では性的マイノリティについては扱わないこととなっているが、数社の小学校保健体育の教科書で『心と体の性が一致しない』ことがあることについて触れているように、世の中のほうは動いていると思っている。」

その後の質疑応答では、「修学旅行等のお風呂の問題で、学校が始めて気づくきっかけとなると思うが、そういった事例は届いているか」との質問に、堀部主事は、「いくつかアドバイスを求められることはある」とし、具体的な事例をもとに、どういった対応がふさわしいか議論になりました。宮崎議長は、かつての同和教育にあったように一定の指導要領が必要ではないかと提起しましたが、学校現場での人権教育の年間計画としては「男女平等・同和問題・外国人教育・障害者問題」と大きく4つの積み上げているカリキュラムがあり、LGBTについては男女平等の高学年向けのところで研修しているとしました。

「十人十色の子どもたちに、個別ひとり一人丁寧に向き合う」という理念は正しいとしても、具体的にはハード面も含め、100%対応することは不可能という状況は、土屋課長も認めざるを得ない場面もありました。掲げた方針に見合う予算と、人的配置等、行政の本気度が問われていると感じました。

 

次に、市営保育所の民間移管の状況について村上課長より説明がありました。

 「民間移管については平成26年度(2014年)から移管が始まっていて、今年度修学院、淀が民間移管となり、来年度は崇仁保育所が移管の予定となっていて、現在、計9か所移管していて、来年度で10か所となる。

 現在選定手続きをおこなっている聚楽保育所について今年度移管先が決まれば、2021年に聚楽が移管になり、現在京都市が公表している民間移管の対象は11か所である。

園の名所については、吉祥院については経過として「青い空保育園」となっているが、錦林保育所は錦林保育園、山ノ本保育所は山ノ本保育園と、最近では保育所が保育園に代わるだけで、基本的には地域に配慮した形で地元の名前をつけている状況となっている。ただし、来年度移管する崇仁保育所については場所が若松学区へ移転するということがあり、名称は変わるだろう。

 今日は、主に、吉祥院と錦林についてお話したい。

三者協議会について、錦林は今年3月と5月、2回分の状況を資料としてつけている。三者とは、保護者、法人(園)、行政の三者で、基本的には園長から説明があり、それに対する質疑応答という形式でおこなう。錦林は平成28年度、移管の前年度から始まっていて、3年で18回、2か月に1回の割合でおこなっている。

特に保護者からは、担任の先生だけではなく、どの先生も子どもたちを見ているところが、違いとしてあると指摘がある。同和保育ということで言えば、現在はそうした言葉ではないが、一人一人の子供を丁寧にみていく、また保護者支援という取り組みが大切。今でも、新規の方に対して家庭訪問をして、家庭の中でお話を聞く。それ以降継続の家庭に対しては個人面談をしている。状況によっては家庭訪問もおこなっている。そういうことも、法人に引き継いでいる。錦林、吉祥院、山ノ本の3保育園に関しては、市営の時に大切にしていたことを理解していると感じている。

いて、楽只保育所については、担当ではないが知っている範囲で説明する。もともと南側に賑わいゾーン、北側に公共施設をという案もあったが、その後、地域のほうから要望書が提出され、楽只小学校の跡地に公共施設を持ってきてくれないかということがあり、京都市のほうも検討した結果、公営でのまま、新しく建てるということになっている。今年度予算がついていて、設計にかかる。基本設計、実施設計を1年でやろうということにしていて今のところ、R4年度(2022年)には移転という計画をしている。児童館やグラウンドの使い方をどういうふうにするのか等、地域とも話し合いをしながら、整備をすすめていっている。」

その後の質疑応答では、部員から、「公営保育所が移管されることで、勤務する保育所そのものがなくなり、保育士の配置換えや待遇面での変動などがおこなわれていることが指摘され、たとえわずかでも保育士の採用は続けてほしい」との要望があがりました。村上課長は、「たとえわずかでも、継続した採用は求めているし、一定の質の向上のために市営保育所を残していかなければと思っている」と述べました。また、「保育現場でさえ、保護者が地域の人間かどうかわかっていない中で、やはり、地域の特性を生かした保育所運営をしてほしい」などの意見もありました。

最後に宮崎議長が「今、全国水平社100年ということで各地域の記録を掘り起こしているが、行政の係りでは託児所からはじまった歴史がある。ムラの古い人は今も保育所を『幼稚園』と呼んでいる。役所は民間移管となると、たいていは5年で手をひいてしまうが、責任放棄ということではなく、経過を含めた研修等は必ずやってほしい」と述べ、部会を閉じました。