人権確立・教育保育 合同部会開催
―差別事象にかかわり、学校現場の対応を問う―
6月6日(金)、京都府部落解放センターにて、部落解放同盟京都市協議会の人権確立部会、教育・保育部会の合同部会が開催されました。昨年12月、左京区にある公園の多目的トイレ内で、近くの中学校に通う生徒が差別落書きを発見し学校に報告してくれた後の、学校対応について協議するために、合同での開催となりました。
京都市協からは8人が参加し、京都市からは、教育委員会学校指導課の植田圭佑多文化共生教育・社会連携担当課長、中野雄介人権文化推進課長、大森淳啓発・事業調整課長が参加しました。
神原弘明人権部会長が開会のあいさつの後、双方の自己紹介がされ、植田課長が差別貼紙発見時の対応について経過が報告されました。 時系列でまとめられた内容は以下の通り。
2024年12月12日(木)18時頃、修学院中学の生徒が、下校時に立ち寄った辻公園の多目的トイレ個室内で当該の張り紙を発見した。生徒は貼紙をはがして自宅に持ち帰った。
12月13日(金)8時15分頃
生徒が中学校の教員に、昨日、当該貼紙を発見したことを伝え、教員に貼り紙を渡した。生徒は「昨日の人権学習でそういった内容は間違っていると思ったから持ってきた」と言っていた。(12月12日、5・6限に人権学習として障害者の人権について授業をおこなったが、その際、差別には部落差別など様々な差別があることについても説明をしていた)
教員から教頭へ貼紙が渡され、その内容が「中坊のガキ」、「死んでしまえ」といった趣旨の内容がふくまれており、校長に報告。校長は教頭に、補導主任の教諭から下鴨署に連絡するように指示。
同日9時45分〜10時35分
下鴨署から2名の警察官が来校。警察に貼紙を渡して事情を伝えた。警察が聞きたい情報(誰か一緒にいたか。何時ごろ発見したか。トイレのどの場所か)について、授業中ではあったが当該生徒の教室内に補導主任が入り、生徒に確認。警察は、事情把握後、辻公園へ現地確認に向かった。
報告の後、植田課長は、この一連の事件について教育委員会への報告がなかったこと、また、3月1日に開催された第56回人権交流京都市研究集会ではじめて、情報があがってきたことについて残念に思うと述べました。子どもの命にかかわるとして警察に通報したのは理解できるが「学校は差別事象にかかわるガイドラインにそった対応ができていなかった」という認識を示しました。
実際、学校は、警察に渡す以前に落書きの写真をとる、コピーを取る。また、経過をメモで残すことなどという、ガイドラインに沿った行動をすることもなく、安易に落書きそのものを警察に渡していたのです。教育委員会や人権文化推進課が内容の把握ができないことから、植田課長、中野課長で下鴨署に出向いたが、教頭から受け取ったものなので、修学院中学の教頭でなければ出せないと言われる始末でした。情報公開請求によってやっと警察署から取り戻した差別落書きを見た植田課長は、初めてのことでもありショックを受けたこと。生徒も、よく破り棄てることなく持ち帰り、学校へ報告してくれたと思うと語りました。
参加した支部員からは、かつてコミュニティセンターなどの隣保館があった頃は、こうした事件についてはすぐに地域で共有して対処したこと。差別事象ととらえることなく、警察に報告して「おしまい」とする意識は、あまりにも人権意識が低いこと。普段からこのような差別事象に対応するためには、人権研修が大切であることなどの指摘がありました。
さらに、ガイドラインに基づくとすれば、例えば公園の清掃を依頼されている民間業者に対しては、差別落書き等があった場合、写真を撮って、報告書を書いてと指導があるが、学校には甘いのではないかという声が耳に入っているという参加者もいました。
古谷宏事務局長からは「昨年11月の意見交換会では、市協として、ガイドラインの見直しを要望したことに対し、中野課長からは記載例を示すことで周知を徹底するとの回答であったが、それさえもできていないことが明らかになったのであり、想像以上に差別に対する意識が希薄になっているのではないか」との危惧が表明されました。
また、神原部会長からは、「学校は警察に刑事事件として届けているが、差別事件としてどうするかという発想があったか」と質問があり、植田課長は、「差別的な内容であるとの認識はあったが、差別事件として警察だけで終始することではないという意識がなかった」と回答しました。
研修の在り方についても議論があり、植田課長は、こうした事例をリアルに伝えていくことの必要性を認めつつ、様々な差別事象に対応していけるような研修をおこなっていきたいとしました。部落問題の研究会も、大学の先生と協議して、やり方は定まっていないが今後につながる、基礎的な部分を底上げしていく必要がある。学校現場と教育委員会との連携も含め、大きな視点での共有を図っていきたいと述べました。
最後に、部会長からは、「差別事象の情報公開請求を3か月に1度くらい行っているが、学校の文書が開示されたことがない。いじめに関することなど、差別はあるはずだと思っている。『いじめ』という分類に入れてしまうことで、差別事象という意識がないのであれば問題」と情報開示の在り方に言及がありました。
閉会挨拶として、木下松二議長は、「部落差別が今あるかどうか、という議論ではなく、具体的な差別を一つ一つなくしていくことが、最終的に差別をなくしていくことにつながっていくと思う。これからも相談や話し合いを継続することで、共に取り組んでいきたい」と結びました。
後日、7月10日におこなった京都市協から京都市への差別事象にかかわる情報公開請求では、通常の請求に加えて、『京都市立学校のいじめについて、差別(部落、障がい、女性、外国人、LGBTQ等)にかかわるもののすべてを、2024年1月1日以降2025年7月10日までの文書(メール、メモなどを含む)のすべて』として請求をおこないました。結果については、後日また報告します。
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