京都市協解放学校 開催
7月2日、京都府部落解放センターで「市協解放学校」が開催され、前議長の宮崎茂さんが「戸籍などの不正取得を許さない取り組みと人権確立に向けて」とのタイトルで講演をおこないました。市協各支部から20人が参加。京都市からも大森淳、人権文化推進担当課長が参加しました。
竹村忠浩事務局次長の司会ではじまり、冒頭、木下松二議長が主催者として「差別の現状を知り共有する機会としたい。次の世代に伝えるべきことをそれぞれが、自分の言葉で語れるようになるということが大切と考え今日の機会をもった」とあいさつしました。 講演は、今年2月に京都で開催された第38回人権啓発研究集会で話した内容を下敷きとするもので、まずは、身元調査を目的とする戸籍の不正取得が、いかに人の人生を左右する重大な差別事象であるのかという一例として、2003年に京都府連に持ち込まれた「結婚差別」の相談から話をはじめました。京都山科の税理士事務所において、所長の息子とその従業員が結婚するという段になり、父である税理士が司法書士を通じて女性の戸籍を除籍謄本もふくめて取得したところ一方の本籍の所在地から部落と特定。結婚を反対されたというもの。何度かの話し合いにもかかわらず、反対の態度をかえることはなく、むしろ「息子はこうした家族内のことを外部に相談するなど愚か者だ」との態度であった。また、戸籍を取得された女性も、結婚に反対されるまで、自らが部落出身であることを知らなかったということで、本人いわく「これまで私は差別する側の人間であった」として、二重の立場を経験することになったとのことで、もたらされた衝撃は複雑かつ大きな問題であったということです。結局折り合いのつかないまま、二人は結婚し、子どもが生まれたことから、さすがに孫の顔をみれば、心が変わるかもしれないと両親のもとを訪れたが、そこでも二度と来るなと追い返されたという事実も伝えられ、差別をする側の頑迷さを目の当たりにしたということです。
こうした繰り返される結婚差別の実態がありながら、その2年後、戸籍の大量不正取得事件が全国的に発覚しました。どうにかして根本的に事件を防ぐ方法はないものかという思案の末、当時大阪府狭山市で事前登録型本人通知制度ができたということで、解放同盟内でもこうした制度を広げていこうという運動の機運が高まりました。
京都市協として不正取得をおこなった行政書士名での住民票・戸籍謄抄本等の請求について情報公開請求をおこなったところ実際多くの取得がなされ、行政書士会が発行する請求書の続き番号については同一番号での請求も発覚し、あきらかにコピーによる捏造であることもあきらかになりました。京都市に対しては、「そちらが保管している市民の情報、プライバシーについて勝手に取られるということは、京都市もまた被害者なのではないか」という市協からの訴えに対して、当時の地域自治推進室の三宅英知室長が真摯に応えるかたちで行動し、弁護士会からのクレームに対して、情報の保全という意味で、他の法令なども踏まえたうえで30日ルールを確立し、本人通知の実施に踏み切った経過について話しました。
その後も別の行政書士名で何件か不正取得事件は発覚しましたが、京都市はそうした事件に対して、逮捕を受ける形でその取得が不正であるという蓋然性が高いということで、取得された「被害者」については事前登録がなくても訪問をして伝えるなど、丁寧な対応をしています。また、弁護士会の意向を受けて、「遺言」にまつわる取得については関係者に知られては支障をきたすとしてルールからはずれていましたが、その規定も現在は撤廃されています。
最後に、宮崎さんは、冒頭に話した結婚差別事件について、戸籍を取得された本人自らが部落出身であることを知らなかったという事実についてもう一度触れ、「これは、親たちが子どもたちに部落出身であるという事実をどのように伝えるかという問題、また、カミングアウトとアウティングの問題にもかかわる」と指摘しました。市協の三つの部会の継続等、これからも運動の継続と発展を呼びかけて、解放学校を終えました。
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