戸籍等の不正取得は許されない!

 

事前登録型本人通知制度が京都市で実現へ−くらし環境委員会傍聴記

 

 

24日、京都市会「くらし環境委員会」にて『住民票の写し等の交付に係る事前登録型本人通知制度の実施について』報告があり、市協事務局が傍聴した。

 

 冒頭、三宅英知地域自治推進室長が行った報告内容は以下の通り。

 

 この度、住民票の写しや戸籍謄本・抄本等の個人情報を適正に保護する観点から、あらかじめ登録をされた方に対して、その方の住民票の写し等を第三者等の請求に基づき交付した場合に、交付の事実を通知する事前登録型本人通知制度を実施することとした。

 2011年から2012年にかけて、司法書士や行政書士が、調査業者等からの依頼を受け、資格を悪用し、全国で1万件以上の戸籍謄本等を不正に取得する事件が発生。これに対し京都市は、不正取得された268人に通知を行ったが、裁判により不正が確定した段階での本人通知では、個人情報の不正利用防止や事実関係の早期究明の点で限界がある。そこで、個人の権利・利益の侵害を防止、知る権利の保障を目的として、事前登録型本人通知制度を実施することとした。

 ただし、留意すべき事項として、弁護士等の業務の密行性の侵害や、正当な依頼について権利行使を阻害する危険性もある。業務の密行性の担保に留意する必要がある。

 

 

●制度の内容は以下の通り

 

1.登録できるのは、京都市に住民登録があるか、本籍がある市民。

2.通知対象となる証明書は住民票の写し、住民票記載事項証明書。戸籍抄本、戸籍記載事項証明書、戸籍附票の写し(それぞれ、除票を含む)

3.通知の対象となる請求は、本人の代理人、本人以外の第三者、弁護士、司法書士、行政書士などの特定事務受任者(八士業)による職務上請求。

4.通知内容は、交付年月日、種別、枚数、請求種別(代理人か、第三者か職務上請求かの別)。

5.通知の時期は、 密行性を考慮し、公布日から起算して30日を経過した日以降に郵送により通知。なお、遺言書のように相当長期に 密行性を担保しなければならない業務は通知を行わない。

6.登録期間は特に設けない。

 

制度実施は6月からで、今後要綱を策定し、4月から5月にかけて広報・周知をはかる。

 

●議員からの質問・協議内容

 

〈公明党・大道〉30日の留保について、弁護士の意見もあったのだろうが、全国的な考え方も確認したい。

 

〈三宅室長〉弁護士会は基本的に賛成の立場にはない。正当な権利の妨げをしないという調整を行った。遺言書はわかりやすいケースであり、密行性については十分に1つずつ配慮する。30日という期間は、債権保全や不動産登記などは1ヶ月の保全で足りるという判断。

 

〈大道〉本籍が京都にあり、東京に住んでいるというような場合、市民にどう周知するのか。

 

〈三宅〉周知は市民新聞や、区役所の窓口、他都市に住んでいる方が知る方法はHP。

 

〈大道〉市民の登録を促す工夫をし、広く周知してほしい。住民票の転出などに際し再登録するなどとすると、再認識するのでは。人権が知らずに侵害されていることの怖さ。また、しっかり運用されているかどうか評価し、チェックする機関もひ必要ではないか。

 

〈三宅〉定期的に登録を自覚する機会を設けるというのは、重要な観点。不正取得の防止という観点からも充分な周知をして、できるだけ多く登録していただく。現在の所第三者機関の設置の検討はしていないが、不正の防止の一方で密行性の担保、その都度適正な判断を本庁と区役所でやりたい。

 

〈大道〉不正請求については個人情報審議会に数字で報告してほしい。この制度の導入により、数字的に抑制されたことが明らかになることが大切。DVやストーカー被害にも悪用されていることから、関係機関へも周知し、当事者に伝えてほしい。単に市民新聞等ではなく、被害に合いそうな市民には直接伝えてほしい。

 

〈三宅〉登録者数など適宜市会に報告する。DV、ストーカーの点については、現在も制限する制度もあるが、それを補完する制度として周知したい。

 

〈自民党・田中〉不正防止には、職員のレベルアップも必要だ。研修はどうしているのか。

 

〈三宅〉とても重要な視点。制度をつくれば全て不正が排除されるとも言えない。巧妙に偽造されている。改めて証明発行の職員へ、個人情報、請求に係わる具体的な内容、見破れる、確認できるように研修を実施したい。

 

〈田中〉国の動きはどうなっているのか。

 

〈三宅〉全国一律の制度がのぞましい。戸住協などを通じて国へは法制化や更なる厳罰化を要望しているが、国はまだ判断に至っていない

〈田中〉密行性とはどのようなもの?

 

〈三宅〉訴訟や不動産移転など、あらかじめ知られることで、いらぬ圧力が想定される場合、法定手続きに入る前に、秘匿することで債権者を守るというもの。

 

〈田中〉公開請求すれば全て開示されるのか。

 

〈三宅〉まずは、「いつ、何を、どの種別で」を通知する。その上で詳細を知りたいときに、通知された方が開示請求する。開示内容は、請求者の元々の依頼、請求事由は開示できない。8士業の代理人、氏名、法人は開示。これは他都市も同様。現在全国で300市町村が実施している。

 

〈田中〉周知は継続的に行いたい。請求の数が知りたい。

 

〈三宅〉府下では北部9市町村、残る南部も6月に導入と検討している。しっかりと運用するため周知する。発行件数は全国で2012年度、住民票758千件、戸籍39万件、附票が6万件。

 

〈田中〉京都市での数字の見込みは。

 

〈三宅〉埼玉、名古屋でしている。名古屋の2012年度9月〜翌年9月の数字は、650人の登録通知は65件ということで、登録の1割である。人口の比較で言うと、京都市は登録が400件、通知40件程度と、単純に推定している。

 

●その他、公明党吉田議員、無所属清水議員、共産党山中議員からも質問があった。

 

 市会でのやりとりにあったように、「事前登録型本人通知制度」の導入は、全国ですでに378の自治体が行っているが、密行性の担保として30日の留保期間を設けたのが今回、京都市の特徴となる。いずれにしても、6月からの制度実施が表明されたことは評価できるが、部落解放同盟京都市協としては、「人権確立部会」を早急に開催し、運用の充実を要望していきたい。