改良住宅への次世代入居は可能か?
京都市「近居入居制度」を学ぶ
2月4日、市協まちづくり部会が開催され支部代表者ら13人が参加しました。京都市からは、都市計画局住宅管理課より松下重志課長と藤岡暁係長が説明に訪れました。今回のテーマは市営住宅の「近居入居」についてです。込み入った内容となりますので、長くなりますが質疑応答のやり取りも含め掲載していきます。
村上光幸事務局長の司会により開始され、冒頭、宮崎議長が以下のとおり挨拶をしました。
「千本地域で建て替えが終了し、現在、具体的には35戸ほど空きがあります。もともと、親の介護のために地域にもどった子どもさんが、住宅を失うという経過において、改良住宅への次世代入居という課題があり、今回京都市であらたに作られた、近居入居という制度を勉強していこうということです。本日はよろしくお願いします」
その後、都市計画局住宅管理課 松下課長より、以下のとおり説明がありました。
私どもとしても、地域のみなさまの色々な要望を聞き、その中で地域の活性化をさらに進めていく方向で、今後のやりかたを工夫していきたい。
近居入居制度は、平成28(2016)年3月に国が作成した住生活基本計画において、基本的施策の一つとして世代間で助け合いながら子供を育てることができる3世代同居、近居の促進という方針が掲げられたことを受け、本市として、検討を進め、平成29(2017)年の9月公募から実施している。これまでに4回行っている。
趣旨として:親と子(又は祖父母と孫)が近くに居住することにより、家族観で子育てや家事、介護などの助けが得られやすくなる。同居の場合と比べ、別の住居に住んでいるので、お互いの生活スタイルを確保しやすいというメリットがある。
募集方法として:募集を行う住戸の中に、近居入居の条件を満たす世帯のみが申し込める枠を設けている。
この条件により、申し込む人の当選確率が高くなる仕組みになっている。1世帯募集を申し込む人については、同じニュータウンまたは学区の一般住宅にも申し込めるので、二重に申し込むことによって当選する可能性が高くなっている。
申し込み区分ということで、二通りの区分を設けている。
一つは、ペア募集。これは同じ団地にある2戸の市営住宅に親世帯、子世帯、あるいは祖父母世帯と孫世帯が同じ市営住宅に同時に入居していただく申し込み区分となっている。
もう一つの1世帯募集。これは、応募する市営住宅と同じニュータウン又は学区(小学校区)内の公的賃貸住宅(市営住宅、府営住宅又はUR賃貸住宅)に、親、子、祖父母、孫の誰かが、現に入居している(応募時点での入居予定も含む)という人を対象に、1戸の市営住宅に入居する世帯を募集する区分。
申し込みの条件としては、
ペア募集については、2世帯のそれぞれが、一般住宅の申し込み資格を備え、かつ、2世帯がそろって入居できること。
1世帯募集については、一般住宅の申し込み資格を備え、かつ子と親、孫と祖父母、各々誰かが現に入居していることが条件。
一定年齢以下の子や要介護認定を受けている人がいなくても、申し込むことができる。
これまでに対象とした市営住宅、エリアとしては、平成29(2017)年9月から4回にわたって近居入居をしている。これまでは、比較的市営住宅、府営住宅、URが多い地域でやっている。具体的には、勸修学区、洛西ニュータウン、向島ニュータウン、醍醐西学区、この4エリアで実施した。
募集戸数、抽選対象者数及び倍率について。
これまでの公募の実績としては、2017年は8戸のペア募集をかけたが、募集がなかったので、2018、19年には1世帯募集のみをおこなった。
倍率としては、例えば勸修学区では、2018年は2倍ということで入りやすくなっている。
その後、質疑応答にうつり、以下のやり取りが行われました。
川瀬:介護等が条件になっていないというのは、大きなことだ。ただ、現に持ち家があることや、所得制限がかかると、単純に戻りたいと思ってもハードルが高いだろう。
松下:住宅困窮が条件になってはいます。しかし例えば現在市営住宅に入っている人は、困窮者としては一般の申し込みはできないが、近居入居については先ほどの条件で、申し込むことができる。
宮崎:入居に関するこの部会のやり取りで、はじまりは、楽只の市営住宅に住んでいる人で、1棟に父が住んでいて、2棟に子どもが住んでいた。父が弱っているし、千本支部が、話をして娘が父と一緒に住むことになり、子どもの住宅を京都市に返した。その後1年経たないうちに、父が亡くなってしまい、父が住んでいた住宅も取り上げられたという事例。千本支部からすると、まちづくりのために1戸にしたらと言ったのに、結果として二つとも失うことになってしまった。その後1年ルールのしばりはなくなり、介護3以上があれば、1日以上同居すれば、住み続けられるように制度の改正があった。今回さらに、制度がかわって、近居入居制度というのは、親が例えば、千本に住んでいたら、今、別の住宅に住んでいる子や孫が千本の住宅に応募することができるようになったと。これが、1世帯入居ということかな。
ペア募集は、もう一つわからないんだけど、基本的に同じ棟で役所が2戸の募集をかけ、そこに入ること。もともと、地区出身で、親子がバラバラに住んでいると、今回、千本で募集をかけるので、親子で同時に申し込もうかと、これが、ペアですか。
松下:そういうことです。ですから、例えば2017年の9月にやらせてもらったとき、これは向島ですが、例えば4棟の602号と603号をペアで募集して、ここに2世帯が入ってもらう。階が違う場合などもありますが、役所がここと、ここ、というふうにして募集しますから。だいたい棟は一緒にして、隣同士の場合や比較的近い部屋を設定しています。
宮崎:ぼくらが気になっているのは、住宅ストック活用計画で、公営住宅は周辺に多い、で、改良住宅は市内の利便性の高いところに建てられたものが多い。田中、東三条、西三条など駅に近い募集については慎重にしないと、抽選にすると一気に埋まってしまうのではないかということ。様子を見ながら慎重に募集する必要があるのではないか。私は一般の募集でもすぐに埋まるような気がする。
松下:我々として公営住宅の立地をみると、伏見区、西京区などに多くあり、今名前のあがっていた市営住宅をはじめ、北の方にはほとんど市営住宅というのがないという状況ですので、議長がおっしゃるように、募集をかければ、私の想像ですが、少ない住戸で出せばやはり10倍を超えるような倍率がつく可能性があるのではないか。左京の東天王町や、また中京の二条となると便利がよく50倍以上の倍率がつく場合があるので、北部の改良住宅も設備が新しくなったことを踏まえると倍率は高くなるのではないかと思う。
西名(千本書記長):でも、これは所得でだいぶ引っ掛かりますね。いい意味でやっているように見えるけど、僕たちにしたら縛りで行けないですよね。
松下:お話にありましたように、いわゆる公務員の方々はなかなか所得制限的があり入居は厳しい状況かと思う。
宮崎:離婚して苦しいねという母子家庭などは入れるだろうけど。
川瀬:うちらでも、若い層などがやはり帰りたいな、と言う。でも無理だと思ってね。
Q:介護の条件は完全にはずれているわけですね。また、家族の人数や、状況によっても条件は変わってくるということで、最初からあきらめることもないのではないか。
宮崎:改良住宅が市営住宅になったかぎり、住宅に困っている人、僕らが運動で言うところの福祉を必要とする人が入居することになる。福祉が必要な人というのはまず、家に困っている人。そうなると、所得的には低い人が対象になるのが市営住宅の宿命だ。高所得者が市営住宅に住む可能性があるのは、改良住宅の従前居住者だけ。その代わりに、割増の家賃を渡している。
川瀬:本当は改良は、普通の公営住宅ではないとは言いたいが。でもそれを言っても仕方がない話だから。
Q:ペア募集で、親とか祖父母とかあるんですが、これはこの範囲だけですか? 叔母さん一人で子どもがなく、ちょっと面倒みなければならないとか、兄弟姉妹がいてという場合もありますよね。
松下:今、この制度については、ここに書いているように直系2親等ということにさせていただいている。「親と子」、「祖父母と孫」という世帯に限っているということになる。同居承認の条件と少し違いますので。
宮崎:うちらの地域で近居入居やるといっても、ほぼそんなに毎年はないと思う。だから、千本に35戸あるというのは、たまたま、元の住人が亡くなったり、戻らない選択をした人がいたからで、そんなにたくさんはない。だから、やるときには、しっかり方針をたてなければと思う。
川瀬:実際に、次年度の9月から募集をかけようとしてるんですか。
松下:私どもとしては市民からの要望を受けたということで検討には入っている。しかし、大規模な団地でしかこれまでやった経験がないので、楽只でどういった問題があるのか、またどういったニーズがあるのか、それを地域の方々の意見も聞いて、判断していく必要があるだろうと思っている。
川瀬:それが一番大事だと思う。地域の声を聴いてもらうということ。
宮崎:改良の場合は、公募は毎年9月と決まっている。
松下:9月に募集して、余剰戸が出たら4月に追加募集をかける場合もありますが、基本は9月です。
宮崎:ざっくり言うと、9月の2か月くらい前に、募集要項が区役所に来ると。その少し前に、市協の方に「来週から区役所に置きます。改良で、何戸入ってます」と言ってもらったら、また、こちらの会議で情報を回せます。
松下:9月募集については、だいたい8月の中旬くらいに広報発表をして、9月から募集案内を出す。今議長が言った2か月というのは、我々も広報を印刷したりなど準備があるので、だいたい2か月まえくらいには、どういう住宅を募集するのかを内部的に決定する時期になっていると理解してもらいたい。
今回の近居入居で条件として追加した点は、子育て世帯が入れるようにということで、どういう公募をどれくらいの数、どういう時期に、何戸ずつやるべきかは非常に難しい問題だと思います。我々も、空き部屋について何年も放置していると、有効活用という点で、批判の対象となる。
宮崎:今話が出たように、北部の市営住宅がほとんどないと。そこで、現在の空き部屋を何年かかけて募集していくが、じうんと十分協議したうえで進めていくということですね。
松下:わたしも、一気にやることは課題が多いと思っています。ただ、何年かけてとかは他の市営住宅の募集を鑑みながら検討する。
宮崎:周辺部ではなく、市内なので、どれくらの反響があるのかは、十分よく見ていきたいと思っている。課長もそこは一緒だと思う。
松下:私どももこれから、千本を中心として意見を聞きながら進めていく。やはり、拙速にならないように、きっちりと、市民や、市会の方々に説明できる公募をおこなっていきたい。
Q:30戸というのは全て新築ですか。
松下:はいそうです。
Q:サイズ(平米)はどれくらい?
宮崎:35平米、45平米、55平米。
川瀬:えらい小さいな。
松下:一人世帯用なんですよ。
Q:小さいメリットもあるが
川瀬:いや、3人、4人は無理。
宮崎:4人だったら65平米は必要。一人15平米を普通は見るから、夫婦二人で35平米、それでも狭い。
松下:30戸あまりのうち、3分の1程度は、35平米くらいの住戸となる。
川瀬:それは、1世帯用と決まっている?
松下:居住面積はさっき言ったように決まっているのですが、小家族用という位置づけです。
川瀬:それは単身でもなく。
松下:単身でも使うことは可能です。我々が今、単身向けと言って募集しているのが43平米以下。ただ、単身にしますと、承継という話が全くなくなりますので。それで、35平米小家族向けというふうにさせてもらって、そういうことも含めて。単身だと、その方がお亡くなりになると承継の可能性がなくなりますので、我々としてもしっかり検討すべきかと思う。
川瀬:35,45だったら、一般の募集もそうたくさんはないかもしれない。
松下:単身で使うかも、検討を要するのではないかと思う。
宮崎:具体的なイメージとすると、娘が結婚して地域を出た。事情があって、別れて子連れで帰ってきた。親がいるからそこに同居している。これを分けることは可能ですよということ。それを上手にしないと逆転しますよ。
村上:例えば、その例をとっての公募は、近居プラス公募、一般の子育て世帯のダブルで募集で公募ということもできる?
松下:頭の体操とすると、今言った、ひとり親でお子さんがいて、戻ってこられた世帯があるとすると、近居ということで言うと、この方がいったん、外に引っ越してもらって、近居に申し込み、当たったら、同じ市営住宅で2戸持てるという話になります。
村上:子育てという福祉対策で、一般公募と、子育てという2重で公募できますね。これも乗っかることできますか?
松下:一般選考と二重に申し込むことはできるが、優先を二つ重ねることはできないです。
Q:この制度は、京都市独自のものですか?それとも、全国的にあるものですか?
松下:資料などを見ますと、例えば北九州市でこういう親世帯、子世帯という取り組みをやっておられる。正直言いますと、URや府営住宅まで含めたかたちで制度設計したのは、政令指定都市では京都市で初めてなのかなと思います。それぞれの市営住宅単位で考えておられるところは、他の政令指定都市でもあるようですが。
宮崎:京都府連の副委員長をしていた、建設交通部というところが住宅や河川をやっているところですが、技官が来られて打ち合わせをしていたんですが、この制度はぜひもうちょっと勉強して使いたいと。そちらに連絡もあったと思うが、これはやはり、改良住宅が各地域や市町村にあり、まだ入居選考委員会があるがそうはもたないから、京都市が先行してするなら、アレンジしてやっていきたいと言っていた。そこで一番問題になってくるのが、やはり所得である。入居委員会であれば所得は関係ない。町内の人間だということで戻れる。特に言っていたのは、西脇知事が子育て環境日本一をつくるために、各部局で何か一つあげてこいと言っている。入居にあたっての控除であるとか考え方もあるだろうが、京都市の案は非常に有効なので使いたい。京都市も子育てを言うなら、乳児には3万4万の保育料がいるなど、そうした世帯が入りやすい環境を整えたらどうかと思う。
松下:私も、そうした意見も踏まえ、さらに制度を勉強していきたい。改良事業法、公営住宅法にのっとってやっているので、研究していきたい。
川瀬:やはり、所得がネックだ。
宮崎:従前居住者の子どもであるとか。
Q:ある意味、わかりにくい、複雑な制度にもなると思うので、実際募集をかける時には、一覧表のようなものを作成できないか。どういったケースに対応して、どのような制度を使えるか、その場合の条件等を列挙したような。
松下:近居入居を平成29(2017)年9月に実施したときのパンフレットがあるので。確かに、募集件数をみていると、特にペア募集はなかなか周知されず、理解されていない部分もあるのかもしれません。そういう意味では、今日、このように説明できてよかったと思っています。
井ノ口:どれだけ出ていった人が戻ってきたいと思っているか、そのニーズも把握しきれていないし、連絡先なども把握しているわけではないので、千本地区としてもそこが課題です。
Q:それこそそうしたニーズは、地元にしかわからない。京都市の住宅室が把握しているわけではないだろうから。
井ノ口:どういう呼びかけの仕方があるのか。町内にはビラはまけるけど。出ていった人間にどう接触していくかが私たち地元として考えていかなければならない。
村上:よろしいですか? それではまちづくり部会をこれにて終了させていただきます。ありがとうございました。
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