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京都市との意見交換会
11月21日(金)、部落解放同盟京都市協議会と京都市各部局との意見交換会が京都市中京区のハートピア京都で開催されました。市協からは役員、支部代表として19人、府連から3人、京都市からは各部局・課を代表して入退出入れ替わりで17人が参加しました。 はじめに京都市協議会を代表して、木下松二議長が「高市早苗新政権が発足し、古い体質が刷新されるかに見えたが、安倍政権を引き継ぐ路線では格差が広がり、弱者に一層の負担がかかるのではないかと危惧する。部落の貧困対策は、安定層の流出を招いたが、知識のないまま出ていった人間は自分たちの子どもに部落であることを伝えられないまま、若い層が結婚などに際し、唐突に差別の現実に直面するという事態を招いている。啓発の必要性が痛感させられつつ、形骸化している現実もあり、本日は根本的に部落問題を解決するという視点で忌憚のない意見交換をおこなっていきたい」と挨拶しました。続いて、京都府連から平井斉己委員長が「私たちはそれぞれの地域に責任を持つ団体であり、行政、京都市とも目指す方向は一緒である。しかし法律が切れてからこの間、ボタンの掛け違いが生じ、まちづくりが足踏みしている事態も散見される。共に乗り越えていくべく胸襟を開いた話し合いが大切」と挨拶。
京都市を代表しては、並川哲男文化市民局長が「多様性と包摂性のある、人権尊重の社会づくりを共に担っていきたい」と挨拶しました。
「部落問題をはじめあらゆる差別の撤廃を求める京都市への要望書」を木下議長から並川局長へ提出した後、要望書項目の順に各課との意見交換に入りました。
まずは「京都市人権文化推進計画」について、2015年に作成し本年を目途に改定されるはずだったところ、3年間延長されて出された追補版について。共生社会推進室から中野雄介人権文化推進課長が対応。「2018年度の京都市意識調査、2020年法務省調査結果から、部落問題は解決に至ってないと認識しており、生まれや住んでいる地域によって差別されない社会の実現に努めなければならない」と述べました。古谷事務局長が、次回の計画では「同和問題の解決」を「総点検委員会報告書」の履行として記述されていることについて、そうした姿勢を一度きちっと手放すようにと伝えたところ、2027年度の改定では市民の意見を踏まえ策定していきたいと述べました。
次にインターネット上の差別的な書き込みに対して京都市の主体性について問う項目では、京都府に追従しているだけではないかという指摘に対して、中野課長は、削除につながる対応を市単独で状況把握に努めたと述べました。平井委員長からは、担当課が分担してパトロールする必要があり、計画的に取り組んでほしいと要望しました。
相談体制の充実については、隣保館に代わり指定管理を委託されている「いきいき市民活動センター」担当の、地域自治推進室より小林寛市民協働・市民活動支援課長が対応しました。要望書には部落差別解消推進法4条に「相談体制の充実」とあり、そうした人員配置の検討を求めているところ、あたかもすでに何らかの対応ができているかのような回答があり一時紛糾しました。「善意の窓口」では地域ごとのばらつきも生じ、地域住民の生活が立ち行かない現実について理解を求めました。
次に戸籍の不正取得については、芝野戸籍住民企画課長が4つの視点から回答。市民への働きかけとして区役所等のポスター掲示、デジタル画像、また検索連動型広告とディスプレイ広告も検討し、今年度中に業者を選定するとしました。職員登録については制度の周知を12月の人権月間におこなうこと。また行政書士、司法書士など郵便請求する業者に対しては京都府域と連動しつつ不正請求禁止のチラシを同封する取組。探偵業者100社に対しても警察との協力でチラシを発出したと述べました。これに対し、問題意識をもって取り組んでいるとしても登録率は上がっていない現状について、フロアから、探偵業法20年にもかかわらず、法務局は今年研修を怠った事実があり、京都市からも復活を申し入れるようにとの発言や、部落の当事者へ被害の可能性を含め啓発が必要との発言があり、事務局からは今後も一緒に考えていくように呼びかけられました。
団地再生計画に基づく4地区6団地の建て替えについては、橋本すまいまちづくり課長が説明。7月からの入居にともない、これまでニュースや説明会で周知してきたが、内覧会ではじめて住戸を理解した人も多くいて、移転による住まいの変化を踏まえ住民目線の丁寧な説明が必要とあらためて感じている。担当者にとっては当初の建設から長い期間が経過し、その歴史を知ることは非常に大事である。余剰地の活用についても地元の意見を十分に聞きながら決定したい。久世、辰巳、改進についての見通しは、まずは現在の事業を着実にすすめ、今後状況をふまえて着手につとめたいと述べました。フロアからは村上副議長が、第2期の再生計画、余剰地の活用を含め、住民への説明と相談体制をどうやってつくっていくかという議論を、早急に部会を通じておこなうことを約束してほしいと要望があり、橋本課長も了承しました。
次に同じ住宅室から、村上住宅管理課長が住宅の公募について説明。若者子育て応援住宅など地域の活性化につながる公募形式の他、一般公募についても地元住民の意向を踏まえて行っていきたいとしました。対して、承継制度がなくなっている現状において「改良住宅」を「ふるさと」と感じている人々がいること。この間「介護のための近居入居」」など議論してきたことも踏まえ、様々なケースに対応できるような研究をすすめて、地域の声にこたえてほしいと要望しました。
次に、教育委員会に対して京都市協がおこなった学校での「いじめ」に対する情報公開請求について、ほぼ開示がなされない現状について、学校指導課の植田課長が回答。デリケートで慎重な取り扱いが必要で発生日時と概要のみにしぼりあとは非公開との方針が示されました。しかし本来公文書は市民共通の財産であり例外的に黒塗りにできるとの趣旨に反していると指摘があり、議論が平行線となるため部会での継続審議となりました。
また教職員の意識調査における「公正採用の取組」については相原生徒指導課長が回答。30%ほどしか理解されていないことについて時間の関係で、これも次回の部会での議論とされましたが、フロアからは教職員の部落問題に対する意識の課題であり、差別をなくすという真摯な啓発を要望されました。
次に「重層的支援体制整備事業」については、局をまたいで保健福祉局から吉井地域共生推進課長、子ども若者はぐくみ局から渡邊子ども家庭支援課長、教育委員会より先ほどの2名の課長が担当。ヤングケアラーの実態調査を小・中・高生を対象に10月27日から行い年末までには回収すると述べ、京都府や専門家とも連携して理解は進んでいるとしました。フロアから、アウトリーチに関しては目的ではなく手段なので継続して議論したいこと。教育と福祉の連携に取り組んでほしいと要望されました。
時間の関係で、要望項目10から13について4課長がそろって回答。まずは、香中公営保育所課長が、多様化する保育ニーズに対応するため公の保育所の役割を果たしていきたいとしつつ、同和保育は行わず一般保育であり、保育集会については業務としての参加は検討していないが歴史的経過を踏まえ人権についての理解を深めたいと述べました。飯田多文化共生推進課長は、ネット上の対応について12月の人権月間で研修すること。狩野男女共同参画推進課長は、困難女性支援法をふまえ「みんと」を設立し、女性支援の民間団体と協同で居場所提供等の独自支援を行っていること。また障害者差別に関しては、遠藤企画・社会参加推進課長が、昨年4月から専門職員をおいて相談をはかっていることや、対応要領の改正で障害女性への複合差別の視点を盛り込んだと述べました。
終了間近ではありましたが、保育の課題については、保育課の部落に対する問題意識をフロアの数名から問われ、これも、継続した議論が必要とされました。
最後に、共生社会推進室より工藤直之室長が挨拶し、本日の取り組みを通し、対話と意見交換が重要であるとあらためて認識した。引き続き議論を重ねていくことで問題の解消に取り組んでいきたいと述べ、今年度の意見交換会は終了しました。
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