2016年 京都市協と京都市「意見交換会」開催 多岐にわたる人権課題について話し合い
11月18日(金)、職員会館かもがわ会議室で、部落解放同盟京都市協議会と京都市の意見交換会が開催されました。京都市協役員・各支部役員等23人、また京都府連から西島藤彦委員長、平井斉己書記長が出席し、京都市からは人権文化推進課をはじめ各部局の担当課が課題毎に出席し意見を交わしました。
冒頭、司会の菱田直義事務局長から役員紹介があり、宮崎茂京都市協議長が挨拶として「この間部会を開催し要望書の精査をしてきた。市内共通の課題を共有するためにこの意見交換会を位置づけている」と述べました。続いて西島委員長が「新聞報道でもあったが、昨日衆議院の本会議で部落差別解消推進法が可決した。この法律は、まだまだ部落差別は現存するとの認識で、国及び地方自治体がその課題克服に向け取り組んでいくべきとする理念的な法律だ。来週から参議院の審議に回る。相談活動や啓発の強化、実態把握が盛り込まれた議員立法である。京都市においてもこれまでの取り組みの総括や今後の課題についてしっかり向き合ってほしい」と挨拶しました。
引き続き、京都市側の紹介を中島英明人権文化推進課担当課長が行い、代表して寺井正文化市民局長が「京都市は国内外の情勢を踏まえ、昨年2月に京都市人権文化推進計画を策定し、人権文化の息づくまちをめざしている。特に同和問題に関してはインターネット上の悪質な書き込み、身元調査等の不正取得等、人権侵害を許さないよう、市民の理解のもと人権教育や啓発など同和問題の解決にむけた取り組みを進めていきたい」と挨拶。
菱田事務局長が市協要望書を読み上げ、議長から局長へ手渡されました。
提出を受けて寺井局長から「立場の違いはあるが、人権を尊重し安心安全な暮らしを実現していこうとする気持ちは共通だ。引き続き協力をお願いする。市役所内部では関係する部局間で相互に連絡調整し、施策を円滑かつ相互的に推進するため京都市人権文化推進会議を設置している。その人権文化推進主任を各区局に設置し、あらゆる施策を人権の視点から推進していくという体制を構築。また、子どもの貧困対策をはじめとした各局をまたがる課題について庁内の横断的な体制を整え、全庁一丸となって対応できるよう努めている。要望書については、この後各課が説明するが、京都市総体として誠実に対応していきたい」と述べ、退席しました。
次に要望項目に添って、担当課から課題別に説明がありました。 1番目の項目は「事前登録型本人通知制度」登録拡大について、地域自治推進室 の向井豊浩市民窓口企画課長が説明。「不正請求による本人の不正利益侵害の防止、第三者に交付されたことを知る権利を保障する目的で制度はあり、2年5ヶ月が過ぎた。ポスター掲示や3月には市民新聞で申請書折り込み広報をした。引き続き区役所窓口の案内による周知、様々な機会での広報を行いたい」。 これに対し宮崎議長は「周知は進んできた。浸透してる。しかし0.13%の登録。ということは市民が 申請しないだけだ、と理解するべき?」「一気に増えるものではなく、繰り返し周知はしていく」。平井書記長からは「宇治田原町で非常に登録数が伸びたのは、窓口職員が来庁者に手渡しでビラを渡すことが功を奏した。それについてどう思うか。また、京都府が三つ折りのリーフをつくったので、連携して使ってほしい。もう1点、登録なしに全市民を対象にして通知する自治体もあるが、そのような制度改正を検討したらどうか」との質問があり、「宇治田原町のケースは把握しており、地道にやっていく。京都 府のリーフは確認する。登録については一人一人の意思を尊重する制度となっている」と答えました。その後も「登録による不利益はないのだから、代表者による登録など、応用をきかせて人数を増やしていけないか」「全国的にも弁護士会を突破したルール作りが参考にされている中で、この登録割合を何とかしていこうということ」「来庁者が多く、待ち時間が多いということは、その時間に配置した職員が声を掛け、説明することも可能であり、短い時間でもTVモニターでの啓発など、積極的な雰囲気と、具体的対応がまず大切ではないかと意見が出されました。向井課長は「区とも相談し、できるだけ進めていきたい」と述べました。
次にガイドラインの見直しについて、喜多村市民啓発担当課長が説明。 「京都市では、差別事象に関して平成22年5月に策定した『ガイドライン』において対応している。庶務担当部長である人権行政推進主任が中心になって適切に対応している。該当する人権課題所管課に情報を提供し、人権文化推進課には全ての情報を提供してもらうこととしている。過去には適切ではない事務の取り扱いも確かに見受けられたが、現在は運用面で人権文化 推進課が一元的に把握している」。 また、京都市協が差別事象の情報公開請求をした場合、『全部開示』の文章でありながら、黒塗りがあることを問題にした項目について、課長は「差別報告文書を黒塗りせず保管、については、差別事象に係わる文書は市内の差別事象の発生状況を把握して効果的な啓発の在り方を検討する上での参考とするという行政目的のもと作成している。京都市個人情報保護条例においては個人情報を収集するときは事務の目的を明確にし、目的を達成する範囲内で蒐集することとされ、それを踏まえて、私共の必要な情報に個人の名や電話番号は入らない」と述べました。 市協側は「現在、奈良や兵庫、府内の大山崎等広域にわたって、個人を特定した同じ内容の差別落書きが発生している。他府県が当然に保管している落書き内容を、京都市だけ知らないということで良いのか。書かれた本人からの個人情報公開請求があったら、どのように対応するのか」と問いかけました。京都市は「開示請求が仮にあっても、文書は不存在になる」との回答に、到底納得できず、「個人名を消すことで、啓発や事件の解決に結びつくのか」「公開時に個人情報を黒塗りにし、一部開示で出したらいいのだから、原本は保管すべきではないか」と、やりとりは続きました。京都市は「様式のない文書は任意作成だ」と言い切りましたが、「書かれた本人の人権を守ることも行政ではないのか。啓発目的だからといって消すことが部落差別をなくすことになるのか」「行政間の情報共有もある。事実がなかったことになる」と様々に意見が出されたのに対し、喜多村課長は「他の市町村と足並みを揃えるという考えはない」と述べたので、改めて話し合いの場をもつことを提起して終えました。
次に「ヘイトスピーチ対策法」をめぐる、条例制定の項目について、総合企画局国際化推進室から、西尾由輔担当課長が説明。京都市の一貫してヘイトスピーチを許さない姿勢を強調しつつも、9月30日に中央省庁と地方公共団体による連絡協議会が立ち上がり、法律に禁止条項がないなかで、自治体がどのような抑止策が可能かという議論がなされ、国の意向として地方にばらつきが出ないようガイドラインを示したいとされたこと。また、10月25日、京都府にも人権教育啓発施策推進協議会にヘイトスピーチの専門委員会が設置され、京都市もオブザーバー参加していることから、京都府とも連携するとしつつ、抑止策を伴う条例については慎重に考えていく立場を示しました。 宮崎議長からは「京都府内では26市町村全てで、ヘイトスピーチに関わる意見書をあげていただいた。議会においてそうした意見表明が行われたことは意義深く、その意向をくんだ条例づくりができないものか。また、ポスター掲示、公共施設の貸し出しへの規制等すぐに実現可能なことはないのか」と質問したところ、「表現の自由との兼ね合いで、専門委員の意見もハードルが高いが、何らかの規制がかけられる方法を探っていきたい」としました。一方で市内における実態把握について、今年に入ってからは1件もないなどと述べ、認識の違いが浮き彫りになりました。会場からはネット上での告知のみをカウントする姿勢ではなく現場での状況把握が必要であるとの指摘がありました。
4つめの項目、都市計画局住宅室関係の課題については、まず、野村暢 すまいまちづくり課長が、ストック総合活用計画について以下の説明をしました
公営住宅の全体状況
また、今年度の事業として、「楽只・鷹峯団地の耐震改修・エレベーター設置工事、浴室設置工事が展開されていること。崇仁では下西団地の実施設計、さらに崇仁南部地域の基礎調査が展開されていること」が報告されました。
次に未登記問題の報告について「当初7地区26筆あった案件。昨年までに5筆5件。今年度に入り1筆、合計6筆の登記が完了。この問題は歴史が古く、昭和50年代、昭和40年代の買収に伴う話しで、亡くなっている方も多く、相続している方々も相当な数に上り、なかなか進まない。そうはいっても、正常ではない状況にあり、団地再生に影を落とさないように最優先に進めていきたい」と述べました。
次に店舗付改良住宅の活用については、住宅管理課より篠原誠一郎管理運営担当課長が説明。「店舗付き住宅は、一部を除きほとんどメゾネット住宅となっている。分割するなどの設備上構造上も検討してきた。住宅政策課、すまいまちづくり課、住宅管理課、3課一体となってこの問題について協議を重ねている。平成29年度を目途に店舗付き住宅についても公募ができないかと進めている。一斉に全部は難しいが、活用可能な住棟からはじめたい」と話しました。
会場からは「不正常な登記問題。公園や道路はともかく集約するとされる住宅の土地はしっかり整理してもらいたい。例えば田中の高層12棟で1件。西三条の3棟、4棟、これも集約住宅。更地にした後使い物にならないのでやってほしい。辰巳については継続活用ということだが、改進はかつての第2乳児保育所の跡が今更地になっているが、8平米ほど残っている。瑕疵があって民間も京都市も使えないということはよくないので、引き続きお願いする。また、篠原課長には障害者差別解消法や、子どもの貧困対策法等を考慮し、特別入居に関し人権上の配慮をお願いしたい。私たちも一人親家庭となった人たちを地域に戻してあげたいという気持ちがある。考え方があったら教えてほしい」と意見。 篠原課長は「優先入居の枠になってくるが、特定入居についてはこれまでも精神障害者の特定入居は平成26年度から保健福祉局 障害保健福祉推進室とも協議しながら、一歩ずつは進めている。ただ優先入居の拡大枠は、もともと住生活基本計画のなかの一般住宅700という中での調整をやっているので、審議会にもかけながら一歩ずつ進めたい」としました。 宮崎議長から「多子家庭、母子家庭については国も推奨している。住宅を必要とする人は、同時に福祉を必要とする人である。ぜひ積極的にお願いしたい」と要望があり、課長は「これまでも議論をしてきた。子育て支援、介護支援等を含めた緊急入居制度を今現在制度構築をはかっている。まだまだハードルはあるが、目途としては来年9月の優先募集入居に合わせて、国とも協議しながら制度構築している」と回答しました。
5番目の項目「障害者差別解消法」に基づく取り組み、6番目の「介護予防・日常生活支援総合事業」については、11月15日 の部会で整理した内容を、もう一度説明してもらいました。 保健福祉局障害保健福祉推進室の中田景子企画課長の説明に対しては、会場から、「これまで『泣き寝入り』だったことが、相談体制が整うことで一定顕在化しているのは良いことだが、声をあげたくても挙げられない人もまだまだたくさんいると思う。周知はどれくらい進んでいるのか」との問いに「対応要領作成後4月以降の取り組みについては速やかに報告するよう、周知徹底している。ただし、対応した職員が相談内容について、差別ではなく、単なる要望だと捉えるケースがないとは限らない。引き続き職員研修を徹底していきたい」と答えました。
長寿社会部の中村典子長寿福祉課担当課長からは、「総合事業への移行当初は、これまで実施している現行相当のサービスは十分に確保できると思うが、新たに設ける基準緩和型サービスは、最初の内は供給が十分でないことも想定されるが、そのような場合は地域で供給されている現行のサービスをご利用いただくこととし、継続的にサービスを利用できるように配慮していきたい。要介護1・2の高齢者への影響だが、国の方で総合支援へ移行するという案が出ていた時期があるが、10月に国の社会保障審議会介護保険部会の方で、当面見送られることとされ、現在議論が続いている。要支援1・2の利用者対象の支え合い型ヘルプサービスでは、元気な高齢者がちょっとした困り毎に、ボランティアで対応してもらう。従事者養成研修のカリキュラム、テキストは京都市が定め、今年度は11月〜3月まで委託による研修をする他、今後一定の基準を満たした法人を指定して、法人による研修も可能とする」との説明がありました。 会場からは「訪問する方は立場が弱い。利用者との関係は従来通り保てるのか。周知はされているのか」と質問があったところ、「京都市は2年間の準備期間で検討してきた。ようやく実施内容をとりまとめたところで、市民への周知はこれから取り組む。介護保険制度は法律で自立を支援する制度であると謳われている。ヘルパーは必要なことを手助けするという点について周知していきたい」と回答したので、今後の展開についてまた情報をもらいたいと要望しました。
最後7項目については、子どもの貧困をテーマに、保健福祉局子育て支援部より安見唯紀児童家庭課長が説明しました。大筋11月8日の部会での報告通り「貧困家庭の子ども・青少年対策プロジェクトチーム」の概要と、アンケートの調査結果概要について述べましたが、今後の展開について質問したところ「国の大綱においても教育・生活・就労の支援と幅広い考え方でつくっているので、同様の枠組みで、今後検討していく」。会場からは「法律の目的は、貧困対策ではなく、貧困の連鎖を断ち切ることにある。これまでと同じ事をやっても連鎖は断ち切れないので、チームのコアをつくらなければならないのでは」と指摘。 「議論が形式化しないように進めていきたい」とこたえました。
最後に平井斉己府連書記長が挨拶。「この間、京都市協は部会で議論しつつ、今日の意見交換会となった。やはり、前半の部分、本人通知制度の問題、差別事象の取り組みについては、若干われわれと京都市の考えに隔たりが気になった。私たちは、部落差別を許さないと同時にその原因究明をすることで、市民啓発につなげていく、そのために何が大事なのかという点を指摘したが、場合によって、大きな隔たりにならないかという危惧を持ったので、現場でさらに協議してもらいたい。最後に子どもの貧困対策は親の就労問題でもあると思うが、そこを京都市はどうしていくのかが気になった。今後協議いただきたい。これからも連携して人権のまちづくりを進めていきたい」と述べました。
また、京都市からは板倉康夫共生社会推進担当部長が「多くの意見をいただいた。特に我々の背中を押していただくような具体的なアドバイスはありがたい。また、意見の食い違いのある部分もあったが、我々も人権は非常に大事だと思っている。立場の違いこそあるものの人権を守りたい気持ちは一緒だと思っている。本日の意見は可能な限り受け止めて今後の施策に活かしていきたいと思っているので、引き続きご協力願いたい」と挨拶し、今年度の「意見交換会」は閉会しました。 |