下京いきいき市民活動センターインタビュー

 

H:NPO崇仁まちづくりの会 専務理事 菱田不二三

O:センター長 岡 敬

聞き手  M:宮崎茂 市協議長

 

 

M:今日はよろしくお願いします。早速ですが、委託を受けている「NPO崇仁まちづくりの会」のなりたち、自己紹介からお願いできますか。

H:なりたちは、崇仁まちづくり推進委員会です。崇仁は未だに事業を継続している地域ですので、運動2団体と自治連合会の3団体で結成しました。今年で18年目になります。まちづくりを進めていく中で、いきいきセンターへ委託の話が出てきたんです。地元で受けてくれということでしたが、最初は受けられないと言っていたんです。隣保事業、特に日常の相談がまだまだあるはずだからと。ただ、他地域の情報も入ってきて引き受けることにした経過があります。

O:今、専務理事が言われたように、改良事業が終わっていない唯一の京都市内の地域で、その改良事業を担っていくということを目的に2002年、NPO法人崇仁まちづくりの会を設立したということです。今年でちょうど10年になります。設立の目的としては、まちの将来を担う子どもたちに、夢のある、生き生きとしたまちを受け継いでいくため、住民総意でまちづくりをすすめていこうということです。それとともに、地域住民の生活と人権を守るという取り組みを行っています。

M:河原町通りの改修もこの協議会ができてから、一気に進みましたよね。

H:あれは、まちづくり推進委員会の課題としてありました。高瀬川の流路を変更しない限りは河原町の拡幅はできない。3団体が一つになってやっと前に進んでいきました。

M:これができたことは、大きいですよね。長い課題だったので。

H:改良事業が進み、ある程度引っ越しが進まないと、流路変更もできません。だからいろんな要素が、川一本を真っ直ぐにする中にもあったと思います。それを3団体が一緒になることで、違う意見も一つにできるということが、とても大きかったです。工事期間の記録で言うと、青函トンネルをつくる工事より長くかかっているんですからね。

M:大きな成果ですよね。それから、ここの祭りも歴史の貴重なものですね。

H:柳原銀行をつくるくらいの財力を背景として、祭りもきちっとやっていました。年寄りに聞くと、引山が一つと船鉾が2基。昔はもっとあったらしいですわ。各町内で、鉾を持ってなくても、六斎念仏の踊りはやっていた。ものすごい賑やかなまちだったらしいです。財力といえば、全国でもはじめて、グランドピアノを小学校に寄付したのも崇仁地区でした。ただ、おもしろいのは、歴史をみたら明らかなように、同和地区の人間は祭りには参加させてもらえなかった。氏子にしてもらえなかったんです。だから勝手にやっていて、お年寄りは「うちの祭りは、盗人(ぬすと)祭りやったんやぞ」と言います。戦後になって自治連合会が奉納金を持って行って、はじめて正式な氏子にしてもらったんです。うれしいことに、ここは1階にデイサービスセンターがあって、通りの向かいにもあります。この二つは、九条のカリタスが経営です。希望の家ですね。そういう関係も日常からあるので、去年から東九条にも祭りの山車が入りました。ネットワークサロンの前も去年から通っています。在日の人は、ああいう神社のお祭りというのはこれまでなかったし、そこへ賑やかな音をならしてやって来るので、びっくりして喜んでいました。希望の家保育所の子どもたちも外に出て、ズラーと並んで見学してくれました。

M:そういう意味では、よかったですね。

H:それも、ここを地元が委託を受けて展開できたんです。ただ、私自身としては、京都市の縛りがきついなと。例えば飲食を絶対許さないとか。営利活動を絶対許さないとか。老人福祉センターがうちは3つあるので、そこのお年寄りをいっぺん集めて、ここの和室で昼食会をと思ってもそれはできない。ただの貸館ということでは味気ないなと思っています。逆に、そういうことで、委託を受けて見えてきたこともあります。そこまで厳しくしなくても、独自の活動ができるようにと。

O:広がりという意味では、利用者が地区外も含めてとても多様になりました。非常に多くなってます。市内だけではなく、他府県からもあります。

H:ただ、参加者の中に京都市内の方がいるかどうかは、必ず聞きますけどね。

O:京都駅からJRがあって、京阪があって、地下鉄があってと、すごく便利がいいので、みなさんここを拠点として活動されてますね。

M:特定の団体という偏りもなく、いろんな団体が利用してますか。

O:そうですね。

M:施設面での不都合な点などはありませんか。

H:別館は旧学習施設ですし、下に柔道の道場もあるし。合気道の練習をやったり。ここの上の多目的ホールは鏡があるので、ダンスの練習にとてもいい。まちづくり推進員会ができてから協議しながらつくった施設なのでので、特に施設面で不都合な点は少ないです。

O:1年目光熱費もどれくらいかかるのか、全然わからず不安に思っていたので、他の経費を全部押さえてやってましたが、2年目になっていけるだろうと。ただ、3つの福祉センターが古くて、その修繕がけっこうかかります。それと、旧学習センターの別館ですね。そこの修繕が多いです。この間も扉が開かなくなったり。畳の表替えをしたり。

M:講座などはやられてますか。

O:講座は、特にないです。独自事業として万華鏡をやってもらったり、包括支援センターと協力して、お年寄りの健康指導などはやっていますが。どちらかというと、講座はこちらから積極的に打ち切ってきたという経過があって、それぞれのサークルが独自に先生を呼んでやっていますね。

M:活性化事業としては。

O:春の楽市楽座と、夏、それと文化祭です。今年は112日から19日までですね。1階〜3階のロビーを全部使って、パネル展示をします。施設利用者の方に自分たちの活動とか、参加者の募集等のアピールをA3用紙に手作りしてもらう。利用者の方々も喜ばれますのでね。夏祭りは、施設利用者の方の参加を募ります。例えば吹奏楽をやってるんだったら是非出てくださいと。だから、崇仁だけではなくて、下京の各学区の利用の団体サークルが多いのでその方々に出てもらっています。出店の方も下京の学区から出店してもらってます。

M:指定管理をエントリーするときに提案された内容というのは、去年1年間スムーズに展開してきましたか。

O:順調に行っています。祭りの周知は、各自治会長にチラシを持って行って貼ってくださいとか、下京全域に配って参加してくださいと。その辺でみんな協力はしてもらっています。

H:貸館は確かにやっているけど、貸館だけではなくて、他所と違うのは、崇仁は大きいし、学区そのもの全部が「崇仁」という「旧同和地区」ですから。地域の人が今も相談に来ると関係ないと言って断れない。祭りや、柳原銀行記念資料館もあって、いろんな取り組みを、センター業務にプラスして経営していかないといけない。また、別館とは言ってるけど、もとは学習センターで、高校生の学習会でものすごく実績を上げているわけです。今は地元の有志で「高校生学習基金」というのを立ち上げています。この頃識字学級も再開して別館を使い始めた。図書館も一応、地元がやるんだったらということで、町内の人が無給で週に3回あけているんです。

M:このセンターのコンセプトというのは?

O:目指していくのは、やはりエリアマネージメントです。

H:うちは一つの学区がうちの全部で、周辺をどうするかという発想になります。小さな地域から学区へという関わり方とは違ってきます。むしろ学区を越えて下京を相手にしていかないといけないので、これから、外に向かって発信していかないと何もできないと思っています。第1回目のワークショップには、周辺の自治連合会の会長や三役の方々が全て来てくれました。下京は横長だけど、せめて東下京という形で、いろんな事業を考えています。エリアマネージメントも崇仁エリアではなくて、駅前東エリアマネージメントと位置づけています。

M:最後に、このセンターが進化していく方向性を聞かせてください。

H:ここは、柳原銀行記念資料館との連携で言うと研修がものすごく多いんです。他府県からもたくさん来ます。バスを入れる所がないので、柳原銀行の空き地を研修のバス専用の駐車場として貸してくれと、今、京都市、特に住宅室にお願いしているところです。三十三間堂にも行ってもらってけっこうですよと言えるように。柳原銀行の研修として、ここの会議室の活用があるし、崇仁全部が独自の人権学習のフィールドになります。

O:観光客にも来てもらいたいんです。庇〈ひさし〉の所に、テラスをつくってテーブルを置いたら、皆さん休憩などに利用するし、PRになるんじゃないかと考えています。

H:三十三間堂に行く人が、たくさんここの塩小路を通ります。高瀬川をきれいにして、休憩スペースを作ったらまた見てもらえるし。いろんなことが展開できると思います。

M:資料も含めて、ここの崇仁小学校の跡地をどうするのかと、議論がありましたよね。

H:地元は世界人権センターを持ってきてと言ってたんですけどね。

M:そうそう。だけど、世界人権センターが難色を示したと。

H:東九条もあるし、部落問題だけでなくて、人権という観点から様々な問題を提起できる地区なので残念でした。奈良の水平社博物館にある水平社呼びかけのビラは、崇仁小学校のものだったんですよ。あれは、借用書を書いて1枚を貸して、もう一枚をものすごく大事にしています。

M:崇仁小学校の宝物という展示もしていましたね。

H:大正時代の短いフィルムが出てきて、これもDVDに焼き直してもらいました。

M:やはり、京都市内の宝物ですよね。

H:下京に京都市学校博物館というのがあるでしょ。そこに、崇仁コーナーで、こんなに世界に誇れる宝物があるよと言っても、絶対にそういうのを入れないですね。歴史博物館というのは、京都の番組小学校の記念館だと。

M:そこは、くやしいところですよね。

H:全国で一番古いピアノですよと、持って行きたいくらいです。

M:これからも、地域の誇りを伝えて行ってほしいと思います。今日はお忙しい中ありがとうございました。