市協「人権確立部会」を開催

 

〜ヘイトスピーチ解消法を踏まえたガイドラインと

事前登録型本人通知制度をめぐって〜

 

 

 

 

 7月23日(月)、市協「人権確立部会」が部落解放センターで開催されました。今回は、二つの課題で開催され、1つは「ヘイトスピーチ解消法の具体化・ガイドラインの説明」ということで、総合企画局国際課推進室 森本幸孝担当課長、文化市民局人権文化推進課水垣直輝担当課長が参加。2つめの「事前登録型本人通知制度の現状と課題について」については、文化市民局地域自治推進室 向井豊浩 市民窓口企画課長、石原夏世課長補佐が参加し、意見交換をしました。

 部落解放同盟京都市協議会からは、宮崎議長、木下副議長、川瀬副議長をはじめ11人が参加しました。

 まず、ヘイトスピーチに関しては、先だって京都府の条例ができたことから、府と市の統一をはかるうえで「ヘイトスピーチ解消法を踏まえた京都市の公の施設等の使用手続に関するガイドライン」が71日に制定されたことの説明がありました。全国では、川崎、京都府に次ぎ3番目の制定であること。使用制限の要件については、基本的人権を侵害することが客観的、具体的に予測されること。また、紛争の恐れや警備によっても混乱を防止できないことが見込まれる特別な事情があげられています。根拠規定としては設置・管理条例等にある「管理上の支障」をもってきたこと。表現の自由の制約につながらないように、使用制限の判断における公正性・透明性を担保する第三者機関を設置するとされています。

 参加者からは、「デモの出発点にあたる公園で、ヘイトスピーチがあったらどうするのか」や、「管理者はきちんと判断できるのか?」等の質問がありましたが、京都市も「とりあえず、積み上げていくしかない」という手探りの状態のようでした。また、排外主義的な思想のもと選挙活動をした場合の規制の在り方についても、研究が必要という指摘もありました。

 このガイドラインに関しては、2016年に制定されたヘイトスピーチ解消法(「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」)において、「不当な差別的言動は許されないことを宣言する」と明記されたことを受け、京都市としてもその具体的な姿勢を示すことができたことに意義があり、まさに、このガイドライン制定を広く市民に広報することが、同じ法律に謳われた「人権教育と人権啓発を通じた国民への周知」の実践ともなります。最後に宮崎議長からは、京都市独自のポスターの作成が要望されました。

 

 次に「戸籍・住民票等の事前登録型本人通知制度」について意見交換しました。冒頭、宮崎議長は、「京都市は、全国に先駆けて内容のいい制度を導入してきたが、最近グレードに陰りが出てきたので、せっかく作った30日ルールを守りながらも、登録数を増やすための意見交換をしたい」と主旨が述べられたのを受けて、向井課長が説明に入りました。「この制度は、平成26年度(2014年)からスタートした制度であり、開始から4年が経過した。開始当初は広報発表、HP等での掲載、また人権情報誌での掲載や区役所でのチラシ配布等、周知をしてきた。2712月にはポスターを京都府人権啓発推進会議が作成し、全区役所、支所、証明書発行コーナーに掲示している。283月には、市民新聞の区版に申請書付きで配布し、一定の効果があった。29年にはリビング京都にも掲載した。一昨年、区・支所にあるモニターに載せたらいいのではという提案のもと、順次掲載を進めた。根本的な推進に関しては、周知を積み重ねていくこと。周りの方に勧めること。窓口に置く新たな広報チラシも作成中だが、市民の方がパッと目にして分かりやすいものになりにくく、今も考案中。」

 これを受けて1点目に、登録数を増やす一つの方法として、「家族一括登録」について進められないか。2点目として、住民票と戸籍の所在地が違う場合にも、現住所地に申請に行くことで、(京都市内に本籍があれば)戸籍の登録も同時に行うことが可能であったはずが、現場の対応がそのようになっていないケースがあること。コンピュータ化により容易になったのだから徹底してほしい。3点目として「30日ルール」(第三者が戸籍等を取得したことを、30日後に本人に通知する制度。弁護士・司法書士等の業務の支障にならないように考案された)について。30日経過の必要がない案件については、速やかに知らせることはできないのか。以上3点について質問がありました。

向井課長は「京都市は戸籍の電算化が非常に遅れ、やっと一昨年末に完成した。それまでは他区の戸籍を見ることはできなかった。現在の様式では、一人について現住所・本籍を記入してもらえば、他区で同時に登録できる。その周知についても努めたい。一方、家族一括については、一人の情報について欄が多いということで、必要部分記載のうえ、署名欄を空白にしてコピーをとって、家族分を一括して出していただければ、登録できる。戸籍と住民票の二つの制度があり、『家族』といってもそれが全く同じに重なるわけではないことから、一人一人でなければ、窓口が混乱する」

それに対して、府内北部では1枚の用紙で家族全員が登録できているとの反論があったものの、京都市は一括の委任という考え方は同じであり、市内の窓口状況と、様式のわかりやすさを考えると、一人一人を丁寧に深く対応するということでした。

 30日ルールに関しては、「一般的に8士業が、隠密性のある裁判手続、債権等にも支障がないと言われていることで採用している」との回答。

 その後、京都市が配布する広報資料ではこの制度のメリットが全く伝わらない、不正取得による被害から身を守ることができるということを、もっと全面に出すべき等々、様々な意見がありました。宮崎議長は、「現在の登録数は6月末時点で2428人だが、通知件数が547件ということで、2割以上の通知がある。不正取得により漏れた情報が、結婚差別や、ストーカー行為、詐欺などの被害につながることを思えば、窓口行政が人権の水際であるという自覚を持つべきだ」と要望し、市職員の登録も含めて、効果的な広報の在り方について、その後も様々な意見が出ました。

 行政にとっては、法に則った第三者請求まで悪し様に言う事態を避けたいとの思惑でしょうが、市民にとっては、プライバシーの大切さ、自分の情報を自分で守るための制度をせっかく手に入れたことが周知されることは、当たり前に必要なことです。