市協「まちづくり部会-@」を開催

 

〜地域共生社会の実現に向けた取り組みをめぐって〜

 

 

  

 86日(月)、京都府部落解放センターで市協「まちづくり部会」が開催されました。京都市から保健福祉局 健康長寿のまち・京都推進室健康長寿企画課 工藤直之 担当課長が、「地域共生社会の実現に向けた取り組み」について説明にあたり、市協からは名の部員が参加しました。

 冒頭、工藤課長は、「地域福祉計画は理念的な内容が多く目標数値などはないが、生活に関わる重要な課題である。計画をつくり、周知し、理解してもらうことが重要だと考えている。関心をもっていただいてうれしく思っている」と表明し、まず、地域共生社会の実現に向けた、改正社会福祉法(201841日施行)の説明がありました。

「改正の背景には、近年の課題が複合的になり、制度の狭間で社会的孤立を生んでいる状況がある。例えば、介護が必要な高齢者と同居する息子の「8050問題」。子育てと介護の「ダブルケア」。支援拒否「セルフネグレクト」によるごみ屋敷の問題等、家族形態の変化、雇用形態の変化、地域住民同士の人間関係の希薄化などの要因により、適切な支援につながらないケースが増えている。そこで、これまで高齢、児童、障害等、分野別に推進してきた縦糸の体制に、分野を横断した「横糸」をとおすことで、「全世代全対象型」の地域包括支援体制の構築が求められている。そのキャッチフレーズとして「我が事・丸ごと」の地域共生社会という言葉が使われている。実現の方策としては、地域住民の主体的な課題解決力の強化。地域での見守りの仕組み作り。地域で解決できない課題は、関係機関が包括的に受け止める仕組みをつくるという2つのアプローチが示されている。」

 以上を踏まえ、『京(みやこ)・地域福祉推進指針2014』の改訂に向けた進め方については、@早期発見・予防的視点 A関係機関の協働 B支援体制の充実という3つの方向性が示されました。今後のスケジュールは、「8月までにそれぞれの分野での検討作業が進められ、9月に地域福祉専門分科会で骨子案が審議される。素案を作成し来年1月〜2月に時期指針に関わる市民意見の募集、3月に最終案をかためる」としました。

 質疑応答に入り、まず、「住民の主体性」に関わり、宮崎議長から、「同和地区をできたら避けたいという忌避意識、在日や母子家庭に対する忌避など4割近くの市民がそういった意識を持っている。地域福祉計画に部落差別解消推進法の制定を踏まえた人権の視点を入れてほしい。民生児童委員の制度ができて100年になるが、なり手もなかなかないという現状で、そうした方々への研修も含めて位置づける必要がある」と指摘しました。

 課長は、「社会福祉法は福祉サービスの根底には、個人の尊厳を明確にあらわしている。基本的人権を包含しているという点では、計画には人権が含まれていると認識している」と応答しましたが、議長は「共生社会の実現のためには、部落の外に出て学区単位での支援をする場合に拒まれることと、地区外からの応援を、部落住民がためらうという二つのベクトルからの障壁があり、その解決が必要だと考えている」と重ねて表明しました。

また、部員からは「地域安心支援員の役割」について質問があり、回答として「2014年(平成26年度)から始まった事業で、全市で12人配置している。CSW(コミュニティソーシャルワーカー)と言うが、地域で非常に複合的な課題を抱えている方々に、集中的に寄り添って支援を行う。社会福祉協議会に事業を委託している。全市に12人配置している。濃密な支援を行うと言うことで、担当ケースが全市で、一人8人しか持てない。人数としては限界はあるが、支援員が支える方は、濃密に関わり、地域に復帰する。足りていないという印象もあるかもしれないが、そこに至らない方々は、保健福祉センターの組織体制の中で、拾い上げていくような仕組みを次の計画の中でもつくっていこうと考えている」と説明。

次に、社会福祉協議会へつなぐことがかなわなかった場合への質問には、「高齢の問題であれば地域包括支援センターにつなぐ。また、保健福祉センターとの連携に関して、昨年度制度改正が行われた。各区、支所の健康長寿推進課に1名ずつ『統括保険師』をおき、福祉事務所と保健センターを融合させて、高齢、障害、児童、タテに割られた分野の複合的課題をヨコに繋げる役割を持たせている。安心支援員に関しても、当然複合的な課題に対応する職員なので、安心支援員と統括保険師が密接に関わり、保護からあがってきた、障害からあがってきた、子育ての相談であがってきた様々なケースを、安心支援員と統括保険師が連携して対応方策を考える。行政と委託先である社会福祉法人との連携ということで実績がある。できるだけ難しい課題を拾い上げて適切な支援をしていく。一方で、ゴミ屋敷問題。これも5名の専任の係長、保険師がいて、ブロック制で担当している。そこも区の中で対策会議をもって関わっている。他都市でも例のない取り組みを京都市ではすでに進めている。さらに、そこの至るまでの方を今後どうするのかというところを、計画の中で考えていく段階である」として、具体的な現状について説明しました。

 従来の縦割り行政において、相談に行った市民が窓口をたらい回しにされるといった状況を改善し、複合的課題に対して包括的に対応するという姿勢は理解でき、方向性はまちがっていないことは認識できたものの、具体的に自分たちの地域や住民に支援の手が回るかどうか、その後も参加者からは不安の声が表明されました。

・現実的に、地域の自立層・安定層が地区外に定住し、残された人たちは、これまで差別を直に体験してきた住民たちであること。

・コミュニティという点では、一般地区よりも部落の方にその紐帯が残っている側面はあり、見守り活動の実践をおこなっている地区もあるが、個人情報の壁でどうしても踏み込めない世帯もあること。

・民生委員も担当性で、自分たちの地区には、決まった人しか入ってこないことが気になること。

 また、町内会との連携は、文化市民局の地域コミュニティ計画案やまちづくりアドバイザーの領域であるが、そうした観点との融合。認知症のお年寄りや、オレンジカフェなどの話題も意見交換されながら、工藤課長は、さまざまな工夫を次期の計画に反映していきたいとしました。

 最後にもう一度、宮崎議長から、「従来から『社会福祉には基本的人権という理念が盛り込まれているはず』、ということではなく、今後、具体的に人権が根付くような取り組みとして、現場での研修、住民への研修をしっかりと位置づけてほしい」と要望があり、福祉分野での 市協「まちづくり部会」を終えました。