市協「教育・保育部会」を開催

 

〜人権教育の具体化と保護者啓発をテーマに〜

 

 

 

 7月31日(火)、京都府部落解放センターで、人権教育の具体化と保護者啓発をテーマに、市協「教育・保育部会」が開催されました。京都市からは、教育委員会事務局指導部学校指導部より菅野明宏担当課長、中澤明美首席指導主事が参加し、市協からは役員をはじめ10人の部員が出席しました。

 まず管理職・教職員研修について菅野課長が説明をおこないました。内容は、以下のとおりです。

「文部科学省が概ね10年サイクルで改訂する教育課程の編成基準に、今回はじめて前文がついた。『これからの学校には、一人一人の児童が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値ある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる』という指針において、特に人権尊重の精神がしっかり表現されていることを、各学校に伝えている。文科省の指導要領を踏まえ、京都市教育委員会で毎年作成している指針が『学校教育の重点』というもの。その中にも『目指す子ども像』として『多様な他者と共に生き、学びあい、人権文化の担い手となる子ども』と明記し、小中の視点にも『自他を大切にする態度の育成』等、人間の尊厳、人権尊重の精神を重視していこうと進めている。『学校教育の重点』に関しては、毎年2月に全ての校長・園長を集めた研修会を実施しているが、そこで本年の研修会で特に、文科省の要領を踏まえ人権教育を全ての教育の基盤にするということを強調した。

 教職員への研修については、今年2月に『教育公務員特例法』の規定が変わり、それに基づき新規採用から管理職までを対象に『京都市教員等の資質の向上に関する指標』というのを作成し、そこにも人権の視点を網羅している。

 具体的な研修については校内研修、集合研修、研究会等大きく3つある。

 まず、校内研修は各学校での研修であり、大量退職、大量採用の時期であり、いかにして管理職やベテラン教員が教育継承していくかが大きな課題である。校内で行う研修会の実施が大切だと考えている。多くの学校で行われているのは、例えば同和問題に係わる単元の授業指導案検討などの授業研修会であり、小中の校種間連携による研修会、若年教員に対する人権研修もおこなわれている。また、主任研修会、各種講座や、校長会・小同研・中人研等の研究会への参加等、様々な機会をもうけている。

 最後に保護者啓発については、多くの学校で行われているのは、人権教育の授業を参観してその後、懇談会というもの。全市的には憲法月間の人権啓発パレード、人権月間のPTA街頭啓発もしている。特に12月には事前の学習会もあわせて行っている」

 以上の説明のあと、質疑応答に入り、まず、木下副議長から「具体的な中身と、行われた研修の集約について教えてほしい」とあり、菅野課長は「校内研修に関しては、計画として把握はしている。ただ詳細について教育委員会で集約いるわけではない。管理職研修で校長のグループ討議で多く話されるのは、若い先生方への人権意識の伝え方。その場には首席指導主事や私も参加し把握している」と応じました。

続いて宮崎議長からは「京都市は同和教育を長いこと培ってきて、そこへ人権教育と名前を変えて今日来ていると思っている。『学校教育の重点』には明治元年から150年とあるが、人権教育や同和教育のスタートとすれば、今年は米騒動から100年だ。米騒動で部落の人たちは悲惨な暮らしから起ちあがり、そこから全国水平社創立とつながっていく。人権教育というならば、そうした視点をしっかり記述するべき」と指摘がありました。

菅野課長は「同和教育という言葉をすべてなくしたということではないので、学力向上を至上目標として京都市の同和教育の歴史があると認識しているし、そうした成果が人権教育のなかに息づいていると思っている。そこは伝えていかなければと思う」と応えました。

「学校にまかせていても、研修はおこなわれないのではないか」「勉強がよくできて教師になった先生は、同和教育とは別世界で生きてきた。部落は悲惨で助ける対象としか思えないのでは」などの意見があり、中澤課長は「熱い思いがありがたい。教師も保護者との出会いで成長する。私自身も同和校ではなかったが、部落出身の子どもを担任したとき、児童の母親や祖父にいろいろ教わった。子ども、保護者、地域と出会い成長する心があってはじめて立派な教員になっていくと思う。『重点』は学校長のバイブルだが、行間に何を込めるかが大事。授業については、6年生の同和問題の単元での研修は100%やっている。啓発もやっている。思いが伝わることが大事。学んだ内容が生き方につながっていくようにするのが目的。錦林小学校では卒業前に識字学級の授業をしていた。そこで教員研修と授業参観も兼ねる。保護者の啓発にもつながり、そこで初めて自分のことを語ってくれた保護者もいた。人権マネージメントシートに各学校の特色が出る。それを実践できているかどうか、そこを教育委員会は指導していきたい」と応じました。

 全体的に、理念としての方針が説明されたのに対し、「実際に」「具体的に」どうなのかという疑問がぬぐえず、さまざまな意見や質問が出されました。

 学校の授業で部落問題をどのように教えているか、また、かつてであれば事前に保護者や子どもたちに、授業での取り扱いを説明したり意見を求めたりしたが、今はどうしているかという問いに関して、中澤指導主事は『今もやっている』としたものの、それが市内全域にわたっているかというと菅野課長の立場からは、一律には難しいとなり、各学校や、校長先生の資質・方針に左右されているのが現実のようでした。

 市協からの重要な指摘としては、「部落差別解消法を含む、障害者、在日外国人に対する人権3法は、どれも理念法ではあるが、市民の側の差別意識解消を謳っている。当事者の生きづらさを社会の側の原因と置くならば、研修の在り方も以前とは変わったものになる必要があるのではないか」ということです。

また、子ども食堂を実践している支部からは、「子どもの貧困課題の解決のため、『しんどい子』が通ってきているが、学校や先生が関わることが少ない。先生方はもっと、現場に出て、地域や放課後の子どもたちとも関わる必要があるのではないか」という意見もありました。

 子どもたちの困難な状況に真剣に向き合いたい先生方も多くいる中、そうした先生たちが存分に活動できるように後押しするのは、やはり教育委員会の方針や姿勢が大きな影響を持っているだろうという全体の意見のもと、最後に菅野課長に、「熱意ある先生方の背中を押してあげて」と要望して部会を終えました。