市協教育・保育部会 開催

 

 −京都市保育所民営化をめぐって−

 

718日(火)解放センターで、前回「子ども若者はぐくみ局」の開設と貧困の課題に続き、今回は市営保育所の移管をめぐり「市協教育保育部会」を開催しました。京都市から、子ども若者はぐくみ局幼保総合支援室公営保育所課長の村上文彦さん、文化市民局人権文化推進課担当課長の中島英明さんが出席、市協から7人の部員が参加しました。

 

開会にあたり、宮崎議長が「京都市の市立保育園には長い歴史と経過があり、我々も関わってきた。今日は保育行政について、もう一度勉強する機会を設けたい」と、市協からの資料として、「京都市の地方改善事業の開始 市立託児所の設置と役割」という京都教育大学の伊藤悦子教授の論文を添付したことを説明しました。

村上課長からは、まず、2014年に京都市が示した「市営保育所の今後のあり方に関する基本方針(改訂版)」について説明がありました。民間保育園と市営保育所の現状としては、入所児童数が市営で約1割であり、大部分が民間保育園であること。保育所運営費における一般財源が、民間に比べ、市営保育所が児童1人当たり年間約69万円高くなっていて、1保育所あたり年間4千万円の高コストになっていることが示されています。そこで、民間への移管は、比較的大規模で、ターミナルに近い保育所は直営で残し、複数所在する地域(左京区、中京区、南区、伏見区)で、2017年度から3年間で以下の通り6箇所の移管が対象となっていることが記されています。

2017年度:錦林保育所、砂川保育所

2018年度:聚楽保育所、山ノ本保育所

2019年度:修学院保育所、淀保育所

 

ちなみに、これ以前からすでに、2014年度は室町乳児保育所、朱雀乳児保育所が、2015年年度は九条保育所、吉祥院保育所がすでに民間移管されています。次に、移管の状況について説明を受けました。

2014年度移管についての、第三者評価によると、一つの園は71項目をABC評価したうち、Bが30項目、Cも3項目あり、現在は改善されているとされつつ、不安な結果が示されています。

 

続く質疑応答でも、2011年に示された「市営保育所の今後のあり方(検討資料)」では、「今後の進捗を踏まえ、数年後の一定の時期に検証することを念頭においてまとめた」となっているが、某かの検証は行われたのかどうかが議論となりました。村上課長は、「民営化そのものを見直すような検証は行っていない」と明言しましたが、「検証のないまま、方針としての民間移管ありきでどんどん進んでいってよいのか」と疑問が出されました。また、移管後の保育士の労働環境、保育の質の継続性等々、様々な不安が表明されました。

移管プロセスとして、当面は、法人・保護者・京都市による三者協議や、移管した保育所についての第三者評価の受審義務づけ、引き継ぎと共同保育に2年間を要すること等、子どもたちや保護者への影響が極力出ないように努めると説明されましたが、実際、財産引き継ぎ期間の6年を過ぎてしまえば、完全に京都市からは独立した一保育所となること。第三者評価がどのようなものであれ、また別の法人が選定される余地がないことなどが明らかになりました。

京都市立託児所は、1919年(大正8年)に三条託児所が開設されて以降、田中、七条、千本、錦林、西三条と次々に開所しました。「同和地区」に限って設置したのは他都市と比べても京都市だけであり、部落改善事業の中核として、治安対策の側面もあったものの、当該地域の隣保改善、家庭改善に寄与してきたのです。

そうした歴史的経過をふまえ「部落差別解消推進法」では、「現在もなお部落差別が存在する」と明記され施行された現在、京都市は、単なる財政緊縮を目的とした民営化を、機械的にすすめるのではなく、「人権保育」が徹底されるよう、地域のそれぞれの実情を充分に把握した上で、今一度立ち止まって検討すべきではないでしょうか。