リバティおおさか 現在地での最後の展示

 

〜再出発を応援しよう〜

 

 

 

 

 531日、1985年の開館から35年を経て、大阪人権博物館(リバティおおさか)は現在地での事業を閉じました。525日(月)からの最後の1週間を総合展示と企画展の特別無料開館とする案内が届き、28日(金)に京都府連事務局員2名と共に取材してきました。

 総合展示の1部屋目はHIV(エイズ)感染者への偏見、それを乗り越えて必死に生き、表現を通じて差別を乗り越えた当事者たちの運動の軌跡でした。1990年代の初頭に亡くなっていった患者さんたちの思いが、時を経て鑑賞する私たちにストレートに訴えてくる、渾身の展示でした。続いて2つ目の部屋は、洛中洛外図屏風をはじめ部落問題にかかわる「ほんまもの」の資料の数々、そして最後の最も大きな展示室には、水俣病、ハンセン病、世界のこどもたち、障がい者、外国籍市民、性にかかわるコーナー、部落と仕事、浪速の渡辺村の歴史等々、「総合展示」と呼ぶにふさわしいさまざまな人権課題が一堂に会し圧巻でした。人権という一言でくくられる言葉が、どれほど多様な課題のもと、痛みや苦しみだけではなく、そこをバネにして立ち上がる強さや豊かさがあったのかと思い知らされました。

 コロナ禍の影響で、3月から臨時休館していた同館は、そのまま退去を余儀なくされるところでしたが、最後の1週間、実物を展示し、来館者が実感するという博物館の意義を十分に知らしめる機会を得たことになります。

 

 そうした展示のすばらしさに触れるにつけ、閉じてしまうくやしさがわきあがります。20134月から大阪府と大阪市による補助金全面停止と、20157月には当時の橋下大阪市長による土地明け渡しの提訴があり、リバティおおさかは8年にわたる自主運営、6年にわたる裁判闘争を経て、再出発を目標とする現実的判断において、和解案に合意することを決定したということです。和解案は@リバティおおさかは現在の建物を20216月までに撤去して大阪市に土地を返還する A20154月から発生している月額約250万円の遅延損害金のリバティおおさかによる大阪市への支払い義務は免除される Bリバティおおさかの収蔵物は大阪市の施設に保管し、その使用料は実費を除いて無償とする C今後は大阪市が適切かつ可能な範囲でリバティおおさかに協力・連携する、という要旨。5月14日の大阪市会で承認され、6月中に和解が成立する予定ということです。

 

 リバティおおさかがある浪速区浪速西は、全国水平社創立大会が京都の岡崎で開催され、南梅吉が居住する千本地域を本部とした後、まもなく移され、運動の中心として機能してきました。京都の崇仁地区と同様に、教育の重要性に早くから気づき、明治初期から小学校の創立につくし、同館の敷地も1928年に地元小学校の整備にあたり地元で資金を集めて購入した後、大阪市に寄付したものといいます。

 そうした歴史的経過があるにも関わらず、法的に大阪市に所有権があるという理由で、賃料を請求し裁判にまで訴えた橋下徹市政は、「政治判断」に名を借りた道義に反する独断を断行したのだと記憶されるべきです。

 

 今後のリバティおおさかは、7月から建物の解体工事がはじまり、収蔵物を大阪市の施設に移転するとのこと。巡回展やセミナー、フィールドワークの実施、書籍やDVDなどの販売、寄付金の募集等を予定しています。そして2022年、水平社創立100周年の記念すべき年を目途として再出発を目指すということです。

 かけがえのない人権の砦としての博物館、リバティおおさかの再生を、心からのぞみ、また、支援、応援、連帯していきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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