差別図書「全国部落調査」発行・販売に関する申し入れ

 

京都市、京都市教育委員会へ

 

 

 

部落解放同盟京都市協議会は、「差別図書『全国部落調査 部落地名総鑑の原典 復刻版』発行・販売に関する申し入れ」を、3月23日午前10時、門川大作京都市長と在田正秀京都市教育長宛に提出しました。

京都市の対応は、文化市民局くらし安全推進部から板倉康夫共生社会推進担当部長、人権文化推進課より、喜多村正一市民啓発担当課長、中島英明事業調整担当課長が出席。教育委員会からは、的山泰久指導部担当部長、菅野明宏学校指導課担当課長が出席ました。

 

京都市協より宮崎茂議長が挨拶し、「状況としては、とりあえずネット上の販売は阻止しましたが、これから販売される可能性がある。昨年は地名総鑑40年という節目の年であった。当時、私も青年部で運動していたが、地域の子ども達が『どうせ僕らは学校を出ても、地名総鑑で就職できないんだろう』と、学習意欲や学力向上を阻害する要因になっていたことを思い出す。近年では結婚差別に使われ、特に戸籍の不正取得とあわせ差別を助長させている。京都市並びに京都市教育委員会においては、これについて売らない、買わさないという周知等、協力をお願いしたい」と述べ、板倉部長、的山部長にそれぞれ要望書を手渡しました。

 

意見交換で菱田事務局長は「どこが部落か知りたい人には必須なんだろう。戸籍をとっただけではわからないから」と述べ、「現在、それが簡単に手に入るところが恐ろしい」と一同確認しました。

 

要望を受け板倉部長は「まずやはり、この図書は非常に問題であると我々も思います。ただ、今後何をしていくかについては、京都府や法務局とも連携し、何ができるかこれから考えていきたいと思う」と述べました。

それに対し宮崎議長は「年度当初にある課長会や人権主任会議等でこういった事実があるということを周知してほしい」と再度要望。その後、戸籍、住民票等の事前登録型本人通知制度や、ヘイトスピーチ、放課後学習についても意見交換し、市協の取り組みを終えました。

 

なお、328日朝日新聞朝刊によると、横浜地裁は「全国部落調査」の復刻出版に対し、出版や販売を禁止する仮処分決定が出されたと報じられました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2016年3月23日

 京都市長 

  門 川 大 作 様

                                                    部落解放同盟京都府連合会

                                                          委員長  西 島 藤 彦

          部落解放同盟京都市協議会

            議 長  宮 崎 茂

 

 

差別図書

「全国部落調査 部落地名総鑑の原典 復刻版」

発行・販売に関する申し入れ

 

 

 日頃より、部落問題の根本的解決と人権確立社会の実現にむけての取り組みに深く敬意を表します。

 さて、鳥取ループ・示現舎より「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」と題した書籍が2016年4月1日に発行・発売されるという情報がインターネット上に掲載され、拡散しています。この書籍は、1936年3月に、財団法人中央融和事業協会が作成した「全国部落調査」と題した被差別部落の調査報告書です。今回、鳥取ループ・示現舎は、「部落地名総鑑」の原典の一つとされるこの書籍の復刻版を発行・販売する予定であるとしており、主な内容は、全国5360以上の被差別部落の地名、世帯数、人口、職業などがリスト化されており、復刻版では、1936年版「全国部落調査」では昭和初期のものとなっていた地名に加え、現在の地名も掲載していると宣伝されています。

 ご承知のように、「部落地名総鑑」は、相当数の企業や個人が購入し、就職や結婚の際の身元調査に利用されるなど、部落差別を助長する極めて悪質な差別図書として1975年11月に発覚しました。この差別事件では、当時の総理府総務長官が同年12月に、この「部落地名総鑑」について「…さまざまな差別を招来し助長する悪質な差別文章が発行され、一部の企業においてはそれが購入されたという事件が発生したことは、まことに遺憾なことであり、極めて憤りにたえない」との談話を発表しており、明確な差別書籍と断言しています。

 さらには、労働大臣談話も出されるとともに、総理府総務副長官と、法務、文部、厚生、農林、通商産業、労働、建設、自治の各省事務次官連名による、各都道府県知事、同教育委員会、指定都市市長、同教育委員会に対して、「…この案内書及び冊子は、同和対策事業特別措置法の趣旨に反し、特に同和地区住民の就職の機会均等に影響を及ぼし、更には、様々な差別を招来し、助長する極めて悪質な差別文書であると断定せざるを得ない。…」という通達も出されました。

 このようなこれまでの経過とともに、厳しい部落差別の実態が明らかになっている現状のなかで、今回、示現舎より「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」と題して、発行・販売されることは、明らかに差別を商うものであり、差別をさらに助長することとなるばかりか、差別を拡散する許すことのできない部落差別行為であり、人権侵害そのものです。

  つきましては、この「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」の発行に対して、部落問題の解決にむけた行政責任を明らかにするためにも、以下の点に関して申しれをおこないます。

 

 

 

(1)「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」と題した、被差別部落の地名などが記載されたこの書籍は、「出版の自由」、「表現の自由」を逸脱するものであり、明らかに差別目的の差別図書であると考えますが、京都市としての見解を明確にされたい。

 

(2)「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」の作成・販売が、差別を拡散し助長する書籍であることから、京都府内で、この書籍が販売されないよう関係機関への取り組み要請など、最善の方策を図られたい。

 

(3)この書籍の作成・販売が、差別目的であり、部落差別を助長するものだと認識したうえで、作成・販売の規制について、国に要請されたい。

 また、インターネット上に掲載される被差別部落の地名一覧についても、根絶にむけた法的規制を国に求められたい。

 

(4)京都市として、「同和地区の所在地一覧および同和地区を特定するための情報を提供または教示しないこと」などを明記した部落差別を規制する条例(仮称)の検討をすすめられたい。

 

(5)「全国部落調査 部落地名総鑑の原典」の作成・販売に関与している鳥取ループおよび示現舎に抗議の申し入れをされたい。

 

                                              以 上