28期活動報告

 

 

 

1.はじめに

 安倍政権は、昨年12月の「特定秘密保護法」成立につづき、7月には、集団的自衛権容認の閣議決定で解釈改憲を強行するとともに、全国的な反対運動が盛り上がる中、9月19日未明に「安全法制関連法案」を成立させました。憲法9条で否定されている集団的自衛権を容認する「戦争法案」であり、論議すればするほどその矛盾が明らかになってきたなかでの、強硬な採決でした。
 そのようななかでも、今年5月に、民主、社民、無所属の議員らが、不特定多数へのヘイトスピーチを禁じる「人種差別撤廃施策推進法案」を提出し、国会で8月末まで審議されました。日本における人権侵害やヘイトスピーチの現状には、
国連の人権規約委員会や人種差別撤廃委員会が懸念を示し、勧告される状況で、京都市も含む130もの自治体から、ヘイトスピーチに係わる意見書が提出され、政府与党もようやく重い腰をあげて、何らかの対応が必要であるとの認識をしめしながら、与野党協議がなされたのです。法制定に至らず論議はストップしましたが、継続審議となっており、次期国会での成立をめざすと同時に、人権委員会設置法についても、議論が再開されるよう「21世紀人権政策懇談会」などの超党派での推進体制を強化していくよう働きかけることが重要です。
 また、今年は、「同和対策審議会」答申50年という節目の年にあたり、部落解放同盟独自の取り組みとして、全国行動が展開され、都府県への要請行動を中心に、あらためて部落差別撤廃にむけた行政としての責務を明確にすることができました。
 同時に「部落地名総鑑」発覚40年、「人権教育・啓発推進法」制定15年、「女性差別撤廃条約」批准30年、「人種差別撤廃条約」批准20年等々、今年は様々な課題で、大きな節目の年でもあり、私たちが「人権尊重」という大きな枠組みのなかで、一つ一つ積み上げてきた成果を確認するとともに、取り残された課題や、新たに発生している問題について、共有する年ともなりました。


2.京都市実行委員会独自行動

 私たちは「全国水平社創立宣言と関係資料」をユネスコが主催する事業のひとつである「世界の記憶」に登録すべく、京都府実行委員会と協力して取り組みをすすめてきました。昨年12月の独自事業「考えてみませんか あなたの人権わたしの人権」では、大阪人権博物館長の朝治武さんをお迎えし「全国水平社創立宣言−世界記憶遺産登録へ向けた経過と今日的意義−」と題し、ご講演をいただきました。また、毎年9月に開催される「リベレーションフェスタ2015」の啓発パネルコーナーに今回登録に向けた全ての関連資料を展示するなど啓発活動をおこなってきました。また、短期間ながら全国的に15万5千を超す個人署名と、530を超す団体賛同署名を集め、7月には、京都府議会、京都市会で登録実現の為の決議が全会派一致で採択されるなど、全国水平社創立宣言に込められた、人間への尊敬を謳い、自主的集団的解放運動へ立ち上がっていった精神が、多くの人々に共有されました。しかし、今回国内で16件もの申請があげられ、その中で群馬県の古代石碑上野三碑(こうずけさんぴ)と、第2次世界大戦中ユダヤ難民にビザを発行し続けた杉原リストの2点の推薦が決定され、残念ながら「全国水平社創立宣言と関係資料」は選定されませんでした。私たちは今後も、水平社宣言を記憶にとどめるだけでなく、その痛みと願いを今に生かしつつ、活動を続けていきます。

3.中央集会と政府各省交渉

 2015年5月20日、2015年度部落解放・人権政策確立要求第1次中央集会が、衆議院第1議員会館でおこなわれました。全国から300人が参加し、市実行委員会から2名が参加しました。主催者を代表して組坂繁之副会長が「国連から厳しい勧告が出ている。先進国というならば必ず必要な法律」と訴えました。また、中西啓寶(けいほう)会長(高野山真言宗管長)のメッセージが披露されました。集会の基調は西島藤彦事務局長が提案し、集会後、京都市実行委員会の参加者は、衆参国会議員に「人権侵害救済法」制定にむけた要請をおこないました。
 また、10月29日にも、第2次中央集会が東京ニッショウホールで開催され、市実行委員会から2名が参加しました。「安全保障関連法案」の成立を受け、中西会長はメッセージで「平和と平等は人類の願い」と訴えました。

4.研究集会等への参加

 京都市実行委員会では、部落解放・人権政策確立についての認識を深めるため、各研究集会等へ積極的に参加・協賛してきました。
 具体的には、京都府実行委員会が開催した第56期、第57期の「京都人権文化講座」への参加をはじめ、2014年9月28日には、“ふれあい・交流・感動を求めて”をテーマに、下京区梅小路公園でおこなわれた「リベレーションフェスタ2014」に協賛し、参加者に「部落解放・人権政策」確立の必要性を訴えました。
 2014年12月15日に龍谷大学アバンティ響都ホールで開催された「2014年部落差別・人権侵害報告集会」に参加しました。集会では「Y住宅販売会社差別事件の取り組みと事件の背景」を解放同盟和歌山県連の池田晴郎副委員長が報告、「ヘイトスピーチのない社会へ」と題してフリーライターで反ヘイトスピーチ裁判原告の李信恵(りしね)さんが報告し、280人が参加しました。
 2015年2月21日、「第46回人権交流京都市研究集会」に参加し、『めざそう!共生・協働の社会創造』と訴えました。集会は午前中の全体集会で映画「ある精肉店のはなし」(ダイジェスト版)を上映し、その後『いのちを食べて いのちは生きる』とのタイトルで、映画監督の纐纈あやさんに講演していただきました。午後からは、5つの分科会に分かれて討議がされました。
 また、「第29回人権啓発京都府集会」が6月30日、京都テルサで開催され、府内各地から550人が参加しました。水平社宣言の世界記憶遺産登録をめざし、世界に人権の重みを発信することを誓いました。
 部落解放・人権政策確立要求京都府実行委員会が、毎月1回定期発行している『ひゅーまんらいと』を市実行委員会の構成団体に発送しました。『ひゅーまんらいと』は8月で354号を数え、第4面の人権文化講座の講演録要旨は研修教材としても利用されています。