2013年 市協・京都市意見交換会を開催

 

 

 

1112日午後6時半から、「職員会館かもがわ」の大会議室で、京都市との意見交換会が行われました。同盟側からは府連役員、市協役員、支部代表者など28名が参加しました。

 この意見交換会は、毎年11月から12月の間に行われている府連網の目行動の一環としの取組であり、今年は、この日を皮切りに12月中旬頃まで府内26市町村との交渉や意見交換会、さらには地協オルグなどが計画されています。

意見交換会は、菱田事務局長の進行で始まり、市協を代表して宮崎議長は「市協にとってこの場は、1年間の出発でありゴールでもある。様々な課題を集約し、9点に分けて要望書をまとめさせていただいた。今、人権問題では6月に障害者差別解消法が制定され、いじめ防止対策推進法、さらには婚外子差別への違憲判決、そして107日にはヘイトスピーチへの厳しい断罪が下されるなど、司法の段階で一定前進をしているが、見落としてならないのは、人権侵害について裁く法律がなく、裁判所では条約を適用したということ。また、人権を侵害された者を救済される法律がないということ。とりわけ、戸籍不正取得に関しては、被害をくい止める手段も十分ではない。今日は、その辺のところを話し合っていきたい」と挨拶がされました。続いて、府連から西島委員長が「残念ながら私たちの人権侵害救済法は、政権交代によって日の目を見ることができませんでした。人権政策の立場からすれば、かなり右に偏った政権ではあるが、世の中は、人権の確立を求める状況が様々な分野で生まれてきている。そういう意味では私たちは、一気に差別禁止法をも視野に入れて運動を展開していかなければならない。様々な差別の実態を見たときに、その必要性が社会の中に存在しているわけですから、そこを喚起しながら取り組みを進めていかなければならない。京都市内でもこの間、差別事件が発覚している。どう解決していくのか真摯なるご回答をお願いしたい」と挨拶しました。

 続いて、京都市を代表して、平竹耕三文化市民局長が「京都市協におかれましては、日々熱意あふれる活動をされていることに対し敬意を表したい。本日はみなさまの意見を聞く貴重な機会だと考えている。現代社会では、人権を取り巻く状況は複雑になっており、児童や女性、高齢者、障害のある方への人権問題に加えて、インターネット上の人権侵害やヘイトスピーチなど、新たな人権課題も生じてます。本市においても、同和問題の解決を含めて、人権を大切にしお互いを尊重し合う、そうした習慣が根付いた社会になるように努力していきたい。本日の意見交換会が実り多いものになるように願っている」と挨拶がされました。

 続いて、菱田直義市協事務局長が、市協からの要望書を読み上げました。

 要約は以下のとおり。

1.戸籍等の大量不正取得事件の課題として研修を強化すること。

2.不正取得の再発防止のために、事前登録型本人通知制度を早期に導入すること。

3.過去2年間の差別事象に係わる情報公開請求で、31件の差別事象が判明した。ガイドラインに基づく対応では、各局区でバラツキがあり、縦割りの弊害により同一事件が把握できないなど適切な対応ができないため、ガイドラインの見直しを求める。

4.京都市市営住宅ストック総合活用計画の進捗状況について

5.地区内残余地等の活用状況、収益金等の使途について明らかにされたい。

6.障害者差別解消法の制定を受けた京都市の見解と対応策、障害者雇用率の現状と取り組みについて。

7.ヘイトスピーチへの判決について、京都市の受け止めと今後の取り組み。

8.いじめ防止対策推進法の施行を受け、京都市が整備しようとする体制、研修、調査、いじめへの対処法について

9.格差と貧困の連鎖が指摘されているが、全ての子ども達が等しく教育機会を与えられる為の取り組みについて

 宮崎議長から、平竹局長へ「2013年度要望書」が手渡しされ、平竹局長から「行政と運動団体とで、立場の違いはありますが、人権を大切にし、安心安全な暮らしを実現するという願いは共通すると考えている。要望については、真摯に受け止め誠実に対応していきたい。本市の基本計画である『はばたけ未来京プラン』の実施計画では、市民一人一人が尊重される社会をめざすとあり、その実現に向けて、人権文化推進計画に基づき、教育、啓発、相談、救済などの取り組みを着実に実施すると共に、引き続き人権文化の息づくまちづくりを推進するために、次期策定に向け、取り組んでいく。事前登録型本人通知制度については、住民票の写し等の不正取得を抑止、防止を目的としており、これらの目的を達成するための一つの有効な手段である一方、遺言や訴訟などにとって、密行性を阻害し、結果として市民の権利行使を侵害する恐れがあることも事実であることから、導入にあたっては慎重に検討する必要があると考えている。不正取得の抑止、防止を図りつつ、密行性の問題にも配慮し、市民の権利行使を阻害しない調和点を見出す必要があると思っており、すでに制度を導入している他の 政令指定都市、自治体の状況を踏まえまして検討を進めていく。詳細については、それぞれの所管が対応するが、今後も必要に応じて、説明、意見交換の場を設けるなど、しっかりと対応していきたい」と決意と回答が述べられました。

その後、意見交換に入り、要望書1,2については、根来文化市民局市民窓口企画課長に回答を求めました。根来課長は、要望項目に記載されている「不正請求を見逃したことは住民基本台帳法第3条の適正管理義務の怠慢ではないか」の箇所について、怠慢ではない。不正取得されたことが悔しいなどと個人的な思いを述べ、京都市として不正を見破れなかったことの本質的な点を説明しないため一時紛糾しました。府連からは、怠慢ではないと言い切るのであれば、どういう表現が適切なのかと問いかけにも、明確な答えがありませんでした。続いて、事前登録型本人通知制度の早期導入については、局長答弁を後退させるような発言を行い、「導入するのか否か」と追及がありました。これに対して、「方向性は皆さんと同じ」としつつ、明言を回避することに主眼がおかれたために、時間が無為に消耗されました。全区の戸籍等の適正管理を司る統括課長として見識を疑う発言と説得力のなさに出席者から失笑とため息が漏れました。

3については、黒川人権文化推進課市民啓発担当課長が、「市協が行った情報公開請求によって明らかになった31件の差別落書きについて、把握していた案件と把握できていない案件があった。殆どは、在日韓国・朝鮮人への憎悪感に満ちた落書きで、場所も市内の公園トイレ、公衆トイレ、中央図書館トイレ、地下鉄トイレなど公的施設を狙った同一犯の疑いが強いものばかりでした。と回答がされました。これに対して、私たちが行った情報公開で明らかになったもので、担当課では殆ど把握できていなかったのではないか。「差別事象に係わるガイドライン」を忠実に執行しても、縦割り行政の弊害により、今回のように同一犯の可能性が高い場合など局間ではバラバラに対応しており、一貫性と統一性に欠けるのではないかと質問しました。担当課長は、「ガイドライン」を見直す予定は今のところなく、むしろガイドラインを運用する職員の資質が問題と答弁しました。これに対して、一部の局を除き多くの職員はガイドラインを正しく運用しており、それでも私たちが懸念していた問題が生じている。やはり、見直しが必要だと糾しました。

4、5については、野村都市計画局すまいまちづくり課長が、「不正常な土地登記の状況は、事業に支障をきたさないように、しっかりと対応していきたい」「地区内残余地による収益については、例えば、千本地区内に整備された定期借地権による土地の借地料などについては、地元の樹木選定など必要な費用にあてている。」と回答されました。

6については徳永保健福祉局障害保険福祉推進室企画課長が、「障害者差別解消法は、3年後の施行に向けて、国の基本方針・ガイドラインが策定されることになっている。動向を見極めたい」との説明に、議長は、「京都府は1年前倒しで条例を施行する。その関連はどうか」との問いに対しては、「京都府の条例は府民に適用されるので、京都市も基準にそって行動することになる」と述べたものの、京都市として主体的につくっていく考えはないとし、人権行政の後進性がここでも浮き彫りになりました。

7については、菅沼総合企画局国際化推進室交流推進担当課長は、「市内で発生した在日韓国・朝鮮人への差別落書きやヘイトスピーチを室の課題であるという認識が欠如していた点を反省し、10月31日付で全局に対して、差別落書き等を把握した場合、「国際化推進室」に報告を求める文書を発したと回答がされました。

 

8、9については冨田教育委員会事務局学校指導課担当課長、井上同生徒指導課主席指導主事が答弁と説明を行い「京都市のいじめ防止条例を策定することになっている。連絡協議会も設置していく。策定は今年度末か来年度当初あたりが目安。これまでも京都市はいじめ問題について積極的に取り組んできた。今年3年目の中学生生徒会議を開催してきた。非行防止として警察官OBの非行防止教室を行っている。ネットのいじめは、民間業者へ委託してネット書き込みの監視をしている」「放課後学び教室」なども実施していると回答がされました。

閉会挨拶では、平井府連書記長が「まず土井課長に確認したいが、前半の躓きについて、我々は言葉尻を取るわけではないが、現実的に、戸籍の不正取得が京都市の区役所の現場でチェックされずに大量に流出されたという事実を、しっかり認識してもらいたい。それに対する抑止の取組について担当課長は非常に言葉が慎重だったが、方向性が同じであるということなので、そこをしっかりアピールし、課題解決をしていくことが重要だと思う。この後も部会を中心に共通項をさぐってほしい。外国人や障害者の問題等も説明があったが、我々は京都市が掲げる人権政策も十分認識し、共に連帯していきたいと考えている。最後に、教育委員会がおられるので一言。全国でトップクラスの同和教育を進めてきた京都市、あるいは近畿で、あってはならないことが、現実に起こっている。実践的にこの問題を防ぐためには、差別を許さない視点での教育を進めてもらいたい。住宅ストック計画など、年に1度ということではなく、通年的に意見交換を継続していってほしい。長時間のご参加に、お礼を申し上げる。」と述べられ、意見交換会は終了しました。