京都市意見交換会 開催

〜課題の共有を前提として〜

 

 1111日(金)、職員会館かもがわで、部落解放同盟京都市協議会と京都市各部局との意見交換会が開催されました。京都府連、市協役員、各支部代表者など26名が参加し、京都市からは、古川真文文化市民局長をはじめ16人が、要求項目ごとに交替しながら参加しました。

 古谷宏市協事務局長による司会進行で、冒頭府連・市協の役員が紹介されました。木下松二議長の新体制となってはじめての意見交換会でしたが、議長は体調不良のため欠席。急遽、村上光幸副議長が冒頭の挨拶にあたり、「部落差別解消法が施行されて6年近くたつが、インターネット上の被差別部落の所在地情報を公開する悪質な差別が絶えない状況にある。本日は京都市の具体的な施策を明らかにしていただきたい。同時に昨年から引き継いでいる部会での課題を確認しながら、次へとつないでいく極めて大切な場であるので、誠意ある回答と前向きな取り組みをお願いしたい」と述べました。

 次に府連を代表して西島藤彦委員長は、ネット上の差別情報氾濫に付け加えて「京都市においてモニタリングで京都法務局に削除要請をされているが、残念ながら全てが削除されていない。被差別部落の動画をアップされ、見た人はさらに2次加工3次加工をしながら悪質な加工を繰り返し、サイト閲覧のカウントを稼ぐという、差別を商いにするような状況が生まれている。法的な救済法を根拠にしてプロバイダの訴訟リスクをなくす必要がある。部落の外に出ている我々の仲間はこうした情報に非常に敏感で、特に婚期を迎えた子供をもつ親としては本当に苦しい思いをされている。京都市としても、国にさらなる要望と法務局への削除要請を引き続きお願いしたい」と挨拶しました。

 京都市の方からも、後藤司担当課長が最初の要望項目の説明に当たる寺井一郎共生社会推進室長、水野正弘人権文化推進課長、中野幹朗担当係長を紹介し、京都市を代表して古川局長が「市協が新体制になってからはじめての意見交換会でありよろしくお願いしたい。引き続き人権問題の解決に向けて、私共もしっかり取り組んでいく所存である」と挨拶しました。

 村上副議長から市協の要望書が手渡され、局長は「全部で12項目ということで、限られた時間ではありますが、後ほど各局と意見交換させていただく」と述べました。

 ここで、古川局長は退席し、要望書に従って回答がなされました。

 項目によっては、回答とはいえない説明もあり、特に差別解消に向けた条例制定についての方向性についての問いについては、国の法律と京都市の人権文化推進計画という、これまでの姿勢で事足りているとし、その必要性を否定するような内容でああったことから、差別解消に向けた意欲そのものについて改めて課長へ問いかける場面もありました。

 3項目目の戸籍の不正取得に関して、請求理由が「遺言」であったため被害通知がなされなかった件について、白井市民窓口企画課長からは、「この121日から改善され、遺言理由についても被害者通知がなされる」との回答がありました。

 4項目目の団地再生計画については、同時に各地域の「いきいき市民活動センター」のあり方についての問いかけもあったことから、それぞれの地域の特性や、いきセンの老朽化の状態にも差があり、柔軟に対応するように要望がありましたが、「大規模改修はしない」という原則にこだわった回答がなされ、部会での議論の継続が必要であると確認されました。

 教育現場における「人権教育」のあり方については、部落問題についての啓発がこの20年おざなりになってきた事実から、より一層取り組みを進めてほしいと特に要望されました。児童・生徒の不登校が毎年最多を更新しているという統計については、京都市も全国的な統計傾向と同様にありつつ、その原因については確かな分析はなされていませんでした。

 時間が押してきたことから、保育所における虐待の早期発見や、改正社会福祉法による「重層的支援体制整備事業」等、駆け足で説明が進みました。ただし、京都市行政からすると、保健福祉局、子ども若者はぐくみ局、教育委員会等、局をまたいで解決するべき支援は、実際上は地域の社会福祉協議会へ丸投げとなっている現状が語られたことから、現場の実態について担当部局が丁寧に目配りしていく必要性が感じられました。

 ヘイトスピーチ解消法については、今年7月の参議院選挙においても、特に参政党などの演説がヘイトスピーチと同様であったことから、来春の統一地方選挙においては国際交流・共生推進室課長みずからが、現場で内容を把握する必要があるとの指摘がありました。

 今年5月に成立した「女性支援法」についてはしっかりと研究し、現場である京都市が主体的に対応するよう要望しました。障害者差別解消法にもとづく相談内容のHP掲載について、複合差別の相談がなかったとの回答でしたが、相談にいたらない悩みや困難について、踏み込んでほしいと思いました。

 全ての回答が終了し、最後に寺井室長から締めの挨拶があり「短い時間の中で、たくさんの意見をいただいた。宿題、課題もあるが、京都市としても差別のない社会の実現に向けて取り組みを進めていきたいと思うし、今後も部会などを通じて前に進めていきたい」とのべました。

 なかなか、前にすすまない人権状況を一歩でも二歩でも進めていくためには、山積する課題を明確にし、共有することが前提となります。そのための意見交換、議論をこれからも継続していくことを参加者一同確認しつつ、今年の意見交換会を終了しました。

今年の要望書は下記PDFを参照ください。

部落差別をはじめあらゆる差別の撤廃を求める京都市への要望書