2018年 京都市との意見交換会開催

 

 

 11月9日(金)午後6時30分より京都市との意見交換会が職員会館かもがわで開催されました。部落解放同盟京都府連役員、京都市協役員、支部代表等25名が参加し、部会で積み上げてきた課題を要望項目として、行政各課と話し合いました。

  冒頭、宮崎茂市協議長が「2年前に、(障害者、外国人、部落に関わる)人権3法ができて様々な取り組みがされているが、まだまだ形として見えない。意見交換しながらいい方向にむけていきたい」と挨拶。続いて西島藤彦府連委員長が「国では、改めて部落問題の解決に向けてどのような施策を打っていくのか準備している。一つは差別事件の集約。また、ネット上の問題。削除要請について法務省は悪質な事件については順次削除してくという方向が出た。部落差別解消推進法は広く国民に向けて解決する取り組みをするべきと言われているので、内面に迫るような意識調査が必要ということで、予算要望され、来年度4月早々に全国規模で展開される。総合的に集約して本心を立てていくこととなる。また、この法律は、個別の課題も示されていて、とりわけ相談体制の強化については、厚労省が隣保館の予算建ての補助を強化していくと言ったわけだが、残念ながら京都市においてはその受け皿の隣保館が存在しない。そのあたりで京都市は相談体制をどう作っていくのか、そのあたりもしっかりとした対応を求めていかなければならない。多岐にわたる要望なので誠意ある回答をお願いしたい」と挨拶しました。

京都市行政の出席者紹介の後、代表して吉田良比呂文化市民局長が以下のとおり挨拶しました。「今年は世界人権宣言70年、京都市世界文化自由都市宣言から40年、さきほどの人権3法の理念を実現していくとこの理想像に近づくと確信している。今年すでに(京都市では)人権に関する市民意識調査を5年ぶりに実施している。結果はまだ出ていないが前回の調査においても、結婚をする際に出身や地域を気にする方が一定の割合でいるというのが実質である。インターネット等での誹謗中傷もあとを絶たない。法律に基づいた啓発教育はしっかり取り組まなければならない。人を生まれや住んでいる地域を理由として差別することは許さない、そういう社会を目指すために、今日の議論が充実したものになるように祈念している」

 村上光幸事務局長が以下の要望書を読み上げた後、宮崎議長から吉田局長へ手渡されました。

2018年11月9日

 

京都市長 門川 大作 様

                                                                               部落解放同盟京都市協議会

議 長   宮 崎  茂 

                                                                           

   

要 望 書

はじめに

市民の行政に対する不信感を払拭し、部落問題の解決に資することを目的に設置した「京都市同和行政終結後の行政のあり方総点検委員会」は、20093月にその「報告書」を提出し、今年度末で10年をむかえる。京都市は、「報告書」を履行することが、部落問題の解決に資するとして、全ての事業を廃止又は転用してきたが、10年をむかえるにあたり、市民の不信感がどのように変化し解消されてきたのか、改善された課題、残された課題が何であるか、いつまでに完全履行するかを総括する必要がある。

この10年の間、インターネットの普及などにより差別や人権侵害が後を絶たず、むしろ増大する現状がある。「人権三法」の施行を受けて、市民啓発や教育、職員研修、相談体制などの京都市の基本姿勢を明らかにし、下記の項目についても誠意ある回答をされたい。

 

 

1.「部落差別解消推進法」では、部落差別の実態把握のために市町村と連携して取り組むとされている。京都市内で発生した部落差別をはじめ障害者や外国人への差別事象(落書き等を含む)などを、京都地方法務局へ遅滞なく報告されたい。  

@  今年度末には「総点検委員会報告書」が出されて10年が経過する。報告書には「今後のあり方」について「公平性、透明性を市民参加による市民目線でチェックが必要」と明記されている。これまでの取り組み内容と成果・課題について明らかにされたい。

A  部落差別解消推進法は、当事者に対する事業法ではなく、社会や市民に対してその差別意識を解消することを趣旨としている。具体的に人々の意識を変えるための深層に届く職員研修・市民啓発について京都市の方針を明らかにされたい。

 

2.事前登録型本人通知制度が発足してから4年有余が経過した。10月末現在の登録者数は2,468人、住基人口の約0.175パーセントにすぎない。定期的な啓発はされているが登録拡大にむけた抜本的な対策を示されたい。また、登録者の1割強の人が何らかの事由で第三者によって取得されている。当事者からの異議や相談等の現状についても明らかにされたい。

 

3.「ヘイトスピーチ対策法」では、「不当な差別的言動は許されない。地方の実情に応じた施策を講じる」などと明記されている。今年7月から「公的施設のガイドライン」が施行されたが実効性を高めるために、条例制定をはじめ市内の民間施設にも協力を依頼するなどして、京都市の差別を許さない強い姿勢を示されたい。

 

4.「障害者差別解消法」の制定を受けて、「京都市障害者自立支援協議会」などの相談内容を見ると合理的配慮の不提供などが、障害のある人の権利を侵害している現状が散見される。公的機関だけでなく、公共性の高い施設や大企業などにも運用面の拡充を要請されたい。また、同法制定時の付帯決議(3年後の見直し)の具体的内容について報告されたい。さらに「障害者雇用促進法」にもとづき、今年度の各任命権者別「障害者雇用率」についても報告されたい。

 

5.「京都市市営住宅ストック総合活用計画」の進捗状況と昨年度の取り組みについて報告されたい。被差別部落の用地は、他の公共住宅用地とは違い、差別と貧困の歴史的経過があり住民の愛着心は非常に強いものがある。ストック総合活用計画の進行にあたっては、住民の意見を十分に拝聴して広範な人々を組みした「まちづくり組織」を主導されたい。

 

6.改正社会福祉法では、「地域共生社会の実現(我が事、丸ごと)」を目指すことを大きな柱としている。この「地域共生社会の実現」を具現化するためには、社会的障壁(心のバリアー)の解消がなければ実現しないと言っても過言ではない。京都市として社会的障壁を解消するための基本的な考え方を明らかにされたい。

 

7.日本の子どもの貧困は6人に1人とされ、中でもひとり親家庭では約半数が貧困世帯であるとの厳しい結果が明らかになっている。子どもの孤食や貧困の連鎖が課題となる現状で、NPO法人等の団体が主体的に実施している「子ども食堂」や「居場所づくり事業」等の取り組みについて、京都市としての把握と支援策について明らかにされたい。

 

8.2015年におこなわれた民間調査では、LGBT(セクシャルマイノリティ)の割合は約8パーセントとされている。学校でいうと1つのクラスに34人の生徒が在籍することとなり、教育現場での対策と今後の方策について明らかにされたい。

 

9.京都労働局交渉では、府・市立高校生の就職面談での違反事例が毎年発生していることが報告されている。市教育委員会は、実態、件数、内容、対応策などについて明らかにされたい。

 

  手交を受けて、吉田局長は「ただいま宮崎議長から9項目にわたる要望書を受けた。この後それぞれの所管の者から説明をするが、内容については我々も真摯に受け止めたい。解消法は、社会にある残された偏見をどう解消し克服していくかという視点が大事だと思う。教育啓発をしっかりとおこなっていかなければならないと日々私たちも議論している。4月18日に市協から条例制定をという要望書を受けた。私どもとしては、まずは、現在行っている人権の市民意識調査の分析をして、法律の趣旨をしっかり踏まえて、来年度に人権文化推進計画の中間的見直しをしていきたい。引き続き、市民の共感や理解を得ながら、人権の息づくまちづくりに向けて取り組んでいきたい。それぞれの立場は違えども、目的は一緒だと思っている。連携をとって取り組んでいく」と挨拶し、公務により退室しました。

  その後、要望項目に沿って、各部局の担当課長が説明をおこないました。

 特に、人権文化推進課に関わる項目について、差別事象の法務局への報告については、これまでは、法務局より問い合わせがあれば答えるという対応であったところ、今年度に京都市が対応した差別事象から適時京都地方法務局へ情報提供を行うとしました。しかし、相談については、人権擁護委員を活用するという方針にとどまっているところ、具体性については今後の検討課題となりました。

その他の項目についての具体的なやりとりについては、今後の方針に役立てるように、市協会議等で検討していきます。