京都市との意見交換会開催

 

 

 京都市との意見交換会が1117日(金)、京都市職員会館かもがわで行われ、市協役員、府連役員、支部代表者等が32人が参加しました。今回は、部落差別解消推進法が公布、施行されて初めての意見交換会となります。

 村上光幸副議長(事務局長代行)の司会進行で、役員紹介がされた後、宮崎議長が挨拶し、「昨年の意見交換以来、三部会を開催しながら学習してきた。この場で確認したことをステップとしていきたい。法制定を武器にしながら、地域の課題を解決していきたい。特別施策ではなく、この法律を受けて、行政としてどのように取り組んでいくのか、今日は時間の許す限り意見交換したい」と述べました。次に京都府連から西島藤彦委員長が「来年度は法律に基づく最初の予算措置が議論されている。先般から所管の法務省とやり取りをして38億円の予算が計上された。リーフレットを70万部つくり周知を図っていくことも確認されている。また、関連する省庁との連絡も取り合っている。法律は、部落差別が現存し、その解決は地方自治体の責任において解決していくこと、そのために相談活動を隣保館の活動を強化することでやっていく、教育啓発の取り組みを展開すると言われている。そういう中で、京都市はどのような取り組みをしていくのか、具体的な内容を示していただきたい」と述べました。

 次に京都市側の出席者紹介があり、吉田良比呂文化市民局長が挨拶しました。「こうした場で、ご意見ご要望をいただくということで、貴重な場であると思っている。しっかりと私たちも施策の説明をおこない、情報共有もしていきたい。来年は、京都市が世界文化自由都市宣言をして40周年となる。理想の都市を語る際にその根底には、人権を尊重する都市であることが必要だと考えている」と述べました。

 市協の要望書読み上げの後、宮崎議長から局長へ手交され、それに対して吉田局長は「この要望書について、人権文化推進会議等、組織的に共有していきたい。立場の違いはあれ、京都をよくしていこうという思いは一緒だ。要望にあった差別事象の対応に関して、黒塗りをせずに原本を保管するという対応を11月からしていきたい。実際にできることを実現していきたい」と述べました。これは、昨年までの協議で、落書きや写真等で個人を特定できる事項を黒塗りにして原本保管することで、仮に救済の申し出があった場合にも被害者を特定し対応することのできない不備について、数年にわたり指摘し続けたものです。ささやかな前進ではありつつ、評価できるものです。

 局長退席の後、各担当課長が、要望事項についての説明を行いました。事前登録型本人通知制度については、申込書と一体型のちらしを作成中であり、イベントなどでも配布したいと述べました。また、第三者に取得された市民に通知した結果、疑問をもち相談というケースはさほど多くはないものの、数件あったと報告がありました。

 差別事象については、各局・区で発生した事件は、すべて人権文化推進課へ情報提供することとなり、実際に把握しているとの説明があり、それならば、現行の実態にあわせて、ガイドラインも見直すべきであるとの意見に対しては、今のところ見直す考えがないと述べましたが、明文化の必要を訴えました。また、これまで法務局への差別事象の報告を京都市が行ってこなかったことで、市内を除いた件数が京都府全体として公表されてきたことから、報告するべきであるとしたところ「法務局からの要請があれば情報提供する」と答えました。

 相談体制については「部落差別解消法をうけて、市民の理解が得られ、利用しやすい方法を検討中」であるとしました。また、2015年からの10年間を視野とする「京都市人権文化推進計画」について、障害者差別、ヘイトスピーチ、部落差別、それぞれについて昨年制定されたことを受けて、見直すべきであるとの提案がされましたが、「計画に加えることを含めて検討していく」と述べました。

 一方ヘイトスピーチ対策の条例制定については「ヘイトスピーチをなくすことが重要なのであり、そのために議論されている一つであることは認識しているが、今のところ目配りできている」として、制定の意志がないことが示されました。全人同協への再加入についても、他の方法があると、その考えがないと述べました。

 住宅問題に関しては、「市営住宅ストック活用計画」の進捗状況について、楽只、鷹峯において1112棟の耐震改修、エレベーター設置、浴室設置等の改善工事を行っている。実施設計として、1315棟の改善工事、鷹峯新5棟の実施設計。また、崇仁南部地域について団地再生の基礎調査を行ったこと。他に5カ所の公営住宅の改善工事があったことを報告。耐震化は56%が74%。エレベーター設置は51%が56%。バリアフリーは41%が44%。浴室設置は71%が73%となったことが述べられましたが、全体として遅々とした歩みであることが明らかになりました。また、改良住宅の店舗については、「物理的に店舗と住居の切り離しが困難なものがあるが、独立店舗について可能なものについて検討している。今年度は、東九条の店舗公募を進め、20173月に活性化として、南岩本市営住宅について現在、7店舗中4店舗が空き店舗。年度内の公募を目指して検討している。その実施が実現すれば、他の団地での実施に繋げていきたい」としました。次に、子育て世代の入居を促進するコミュニティバランスを配慮について、これまでから優先入居があったこと。リノベーションした住宅の募集も、高齢化への一つの歯止めとして、制度基準を緩和しながら政策を進めている。実際には制度設計の変更だけでは難しく、ストック活用計画の10ケ年計画もあと3年で終わるが、引き続き第2期ストック活用計画を検討していかなければならない。住宅室としてはそれに合わせて、住宅マスタープランも考えている。今後の高齢化社会の進行の中でまちづくりの在り方も含めて、具体的な方策も含めたコミュニティバランスのとれたまちづくりを検討していかなければならないとしました。

 それに対し、宮崎議長から、「市内では南部、北部、崇仁という3つのグループで進行している。現在は北部として千本が進み、次は田中か、と説明を受けている。そうなると、他の地域がいつになるのかという議論になる。それは、公平性に欠けるのではないかという意見が出る。40年から50年の住宅で、壊れかけている住宅がある。確かに予算の問題はあるがどのように考えているのか」と問いかけがありました。

 樹下課長は、「たくさんの地域で順番を待っていることは理解しているが、時間も予算もかかり、同時にいくつもの地域にかかることができない。楽只について、団地再生は一段落するが、空き地の活用、公共施設の整備も残っている。まだ終わりがない状態。そこで次の候補についてまだ決められていないのが現状」と答えました。それに対して、「地域住民が死ぬのを待っているのか」という厳しい意見もありました。「千本が進んでいることはいいことだが、次の展望についても見いだしてほしい。改進の泓ノ壺が移転した後、1棟から5棟まで整備された後について。地元のまちづくり抜きにして行政の都合で進んでいるのでは」「こちらは待ってられないので、何らかの形で示してほしい」と意見があり、篠原課長は「高度成長期にどんどん建てた建物がすでに老朽化していることを理解している。PFI方式導入など、いろんな方法を取り入れて、新たな方法を見据えて計画していかなければならないと考えている」としました。市協側は、エレベーター設置棟、課長の裁量でできる部分もあり検討を要請しましたが京都市側は限られた予算で効率的にしていきたいと述べるに留まりました。

 他に、教育現場におけるLGBTへの配慮の課題、子どもの貧困対策、障害者差別解消法にもとづく合理的配慮等で意見交換し、終了しましたが、引き続き積み残された課題について学習、意見交換の必要を確認しました。

 

 

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要 望 書

 

はじめに

昨年12月に公布・施行された「部落差別解消推進法」には、今もなお部落差別が現存しそれを解消することが行政の責務であり、相談体制、実態調査、教育・啓発などの取り組みが必要であると明記された。20023月末「同対法」失効以降、京都市は同和行政の終結が同和問題の解決であるとの見解の下、部落差別の現実を真正面から受け止めることなく、人権課題の一つとして抽象的な取り組みに終始した。

近年、「障害者差別解消法」「ヘイトスピーチ対策法」などの個別法が制定され、各法にもとづき所管部署で具体的な取り組みが進められている。この度の「部落差別解消推進法」制定を受けて、京都市の部落差別に対応する基本的姿勢を明らかにし、下記の要望についても誠意ある回答をされたい。

 

 

1.事前登録型本人通知制度が発足してから3年有余が経過した。定期的な啓発はされているものの、先月末現在の市民登録者数は2,251人であり、京都市民全体の約0.159%にすぎない。登録拡大に向けた抜本的な対策を示されたい。また、登録者のうち、何らかの事由で第三者によって戸籍等を取得されている件数は、380件あり約17%にあたる。当事者からの情報開示請求、疑問、相談等の現状について明らかにされたい。

 

.「部落差別解消推進法」では部落差別の実態調査を行うことが明記されており、市内で発生した差別事象の把握が必要である。現行の「差別事象に係わるガイドライン」では、各局の判断にまかせ統一的に把握することが困難であり、人権文化推進課が一元的に取りまとめる方向で見直しを行われたい。またその件数と内容について京都法務局にも適宜報告されたい。

「京都市人権文化推進計画」では、ひとり一人の人権を大切にするとしており、差別文書等(写真や手紙など)の原本については、個人の人権を大切にする観点から黒塗りをせずに保管されたい。さらに、相談体制については、身近なところで、相談者が気軽にできる相談員の配置などを早急に検討されたい。

 

 

.「全国人権・同和行政促進協議会」では、来年度予算にむけて7月に各省庁への要望活動が行われた。特に、地方交付税などの財政的裏付けを柱に相談体制、実態調査などの具体化を早急に明らかにして欲しい等の内容になっている。

京都市は、この会を脱退されているが、「再入会」の有無と独自の国への要望などをされる予定はあるのかを明らかにされたい。

 

4.「ヘイトスピーチ対策法」では、『不当な差別的言動は許されない。地方の実情に応じた施策を講じる』などと明記されているが、京都市の条例制定に向けた基本姿勢を明らかにされたい。現在、京都弁護士会をはじめ「同法の条例の推進を求める会」などの各種団体からの要望について、どのような対応をしているのか答えられたい。

 

5.「京都市市営住宅ストック総合活用計画」の進捗状況と昨年度の取組について報告されたい。また、改良住宅の店舗活用計画をはじめ、子育て世代の入居を促進するコミュニティバランスを配慮した市営住宅入居基準の見直しなど、高齢化が進み、活気を失っていく地域の再生に向けた方針を明らかにされたい。

 

6.「障害者差別解消法」の制定を受けて、「京都市障害者自立支援協議会」に寄せられた相談内容を見ると『合理的配慮の不提供』などが、障がいのある人の権利を侵害していると言わざるを得ない現状が散見される。公的機関だけでなく、公共性の高い施設や大企業などにも運用面の拡充を要請されたい。また、「障害者雇用促進法」にもとづき、今年度の各任命権者別「障害者雇用率」を報告されたい。

 

7.昨年8月に実施された「子どもの生活状況等に関するアンケート」では、ひとり親家庭の所得は平均世帯と比較して約半分という厳しい結果が明らかになった。学習支援、生活支援、親の相談など寄り添い型支援が必要であるが、京都市の具体的な施策について明らかにされたい。

 

8.調査によると、学校の児童生徒の約13人に1人がLGBT(性的マイノリティ)の対象者であると把握されている。これは1クラス平均3〜4人の児童がその対象者であることを示している。京都市教育委員会において、教育現場での対策と今後の方策について明らかにされたい。