市協「教育部会」開催

子どもの貧困をテーマに学習 〜京都市実態調査から〜

 

 

118日(火)午後630分より、京都府部落解放センターで「市協教育部会」が開催されました。テーマは「子どもの貧困」で、市協からは各支部代表者等10人が参加。京都市からは、保健福祉局子育て支援部児童家庭課より安見唯紀課長、教育委員会事務局指導部学校指導課より菅野明宏担当課長、文化市民局人権文化推進課より中島英明担当課長が参加しました。

 冒頭宮崎議長は「かつては、差別と貧困の問題解決のために、同和教育があった。現在も同じ問題は残っているので、この問題がどうなっていくかということは、市協の中心活動に据えていきたいということで、勉強していきたい」と述べました。

 京都市は、今年41日付けで、部局横断的に「貧困家庭の子ども・青少年対策プロジェクトチーム」を設置し、今後の支援策検討のため、実態調査として85日〜822日にかけて、市内で0歳〜17歳の子どものいる家庭18000件(乳幼児用 6000件、小学校用6000件、中高生等用6000件)に、アンケート調査を行ったということで、まずは、その結果の概要について安見課長から説明をうけました。

調査は無作為抽出だが、所得を聞く設問があることから、貧困状態にある家庭の状況を他と比較して傾向を見る。回収率は5割弱ということです。調査内容は、経済状況、生活状況、地域との関わりや子育て力、悩みなど項目40問。無作為抽出以外にも、生活保護世帯や児童扶養手当受給世帯に対しても別に600件調査したとのこと。まもなく総論としてまとまるが、それを受けてPTで課題や必要な支援策について検討し、年度内に実施計画としてまとめる.

 現在、調査結果については概要しか伝えられないが、例えば「勉強の成績」への問いでは、貧困家庭は全体よりは低い傾向。朝食、夕食を1週間に何日食べているかという設問では、貧困家庭は少ない。また、子どもが持っているものでは、貧困家庭では「勉強机」を持つ割合が低い。放課後や長期休業中の過ごし方では、児童館や学童保育も多いが、自宅等で1人で過ごしている割合も高い傾向にある。保護者については、子どもと遊ぶ機会が少なく、宿題などの勉強を教えることもあまりない。また、相談相手がいない割合が高い等の報告がありました。

 質疑に移り、「国の調査では、子どもの6人に1人が貧困という統計結果だが、京都市もニアリと考えていいのか」との質問に、京都市は「所得の設問が100万円単位なので、正確な比較はできないが、似たような傾向と思う」。「貧困世帯は一般的に余裕がなく、回収率は低くなるのでは」「その傾向はあると思う」。

 

 その他「子ども全般を社会で支えていくということはもちろんだが、一人親家庭など、特に支援を必要とする人たちへ、重点的に施策がなされるべき」との意見。「6人に1人が貧困ということだが、一人親家庭では半数以上の子どもが貧困にある。それは85%が母子家庭であること、つまり母親の収入が少ないということ。非正規ということもあるが、女性の賃金、女性の貧困とも関係している」との意見。特に、プロジェクトチームに「男女共同参画推進課」が入っていないのは問題ではないかとの意見もありました。

 次に「区単位でも来年度を見据えた機構改革があると聞いている。保健センターと福祉事務所の連携等、説明してほしい」との問いには安田課長が「来年度に、子どもと若者に関する施策を一元化するようなことを考えている。保健福祉局と母子保健の施策、また教育委員会の社会教育に関する部分と、文化市民局の青少年、若者に関する施策を一元化できる部局をつくろうとしている。また、区役所についても福祉事務所と保健センター、子どもに関することで言うと、支援課に子ども支援センターがある。児童手当に関しては福祉介護課、母子保健は保健センターにあった、それらを一所にまとめて、子どもはぐくみ室を作って一元的にやっていこう。子どもだけではなく、障害者施策、高齢者施策についても、それぞれ目的別にワンストップでサービスができるように進めようとしている。予定では11月市会に事務分掌条例の改正条例の提案を検討している」

 また、住宅室との関連については「市営住宅を必要とする人は福祉を必要とする人。母子家庭や障害を持った人。就学援助も市営住宅の割合が多い。改良住宅への入居に関してもワンストップで考えられているのか」「各施策に関しても、所管課があるが、共通の視点でやっていくためには、プロジェクトチーム」との答えに、「ハード局はどうしても福祉の視点が欠けるが重要な視点」と、念押ししました。

その他「貧困の連鎖というのは大変な問題だ。社会的にリスクが大きく本気でやってもらいたい」「数値目標を作ることが大切」との意見が出ました。また、一人親家庭の居場所づくり事業をしている支部からの経験として、生活支援の重要性も指摘されました。「本当に施策を必要としている人をどのように見つけるかも課題では?」「学校と地域の連携をどうするか」等の議論があり、菅野課長からは、小学校の「放課後学び教室」中学校の「未来スタディサポート事業」では、貧困家庭だけには焦点を当ててはないが、学力をつけて、自分の進路を切り開いてもらうことは大事と考える。新しい計画でも、教育委員会だけでできることもあるが、福祉との連携も大事なので、やっていきたい」との発言がありました。

 

 さらに、全体的に底上げするという発想も必要だが、もう一度、一人親家庭の貧困については、母子家庭が85%であることから、女性の貧困問題や、母子家庭にも死別・離別・非婚と、政策が分けられている(差別がある)現状で、非婚母子家庭への「みなし寡婦控除」を適用している自治体があるとの指摘等があり、京都市もそうした人権に配慮した施策を要望しました。

最後にまとめとして宮崎議長から「これからも勉強しながら問題提起していきたい。弱者の視点で考えていくプロジェクトとしてあるので、私たちの課題と重ね、議会にも働きかけていきたい」とし、司会の菱田事務局長から「総合行政としての同和行政は、手法については意味があったと思う。課題について解決しようとすれば、横断的に取り組むべきということは、行政も気づいていると思うので、実効性のある計画をつくってほしい」と述べました。京都市からは中島人権文化課長が「本当に京都市も腰を据えてじっくり取り組まなければ。社会全体の大きな課題でもあるが、やっと京都市も実態調査を行ったということで、引き続き議論を継続していきたい」と、締めの言葉にしました。