2015年 京都市との意見交換会開催

 

 

1120日(金)、職員会館かもがわ会議室で、部落解放同盟京都市協議会と京都市の意見交換会が開催されました。京都市協役員・各支部役員等24人、また京都府連から西島藤彦委員長、安田茂樹副委員長、平井斉己書記長が出席し、京都市からは各部局の担当課が課題毎に出席し意見を交わしました。

 

 冒頭、市協宮崎茂議長が「京都市協としては、昨年1年間特に事前登録型本人通知制度については、全国のモデルになる京都市ルールというのが確立して、逆に私共も全国にそのことを訴えることで、広がりを見せている。全国には1600ほどの自治体があり約500の自治体がこの制度を導入しているということで、もう500ほど増やして3分の2の自治体で確立していきたいということでやってきた。しかし、京都市の登録数を見ると1000人ほどと淋しい現実がある。良い制度でありながら活用しきれていない。今日の要望項目は市内の課題をまとめたもので、短時間だが誠意のある回答をお願いしたい」と挨拶し、府連からは西島藤彦委員長が「私からは2点。1点目は今年6月に申請した世界記憶遺産に水平社宣言を登録していこうと取り組んできた。残念ながら国内予選で当選しないという結果になりました。3ヶ月で155千を超える署名と530をこえる団体署名を獲得し、京都においては門川市長を始め、京都市会出席者全員の賛同もいただき、かつてない広がりをみせた。この間の支援に御礼を申し上げたい。もう1点は、今年は同対審答申50年という節目の年であり、全国的にこの答申の意義をそれぞれの首長に訴えていこうということで、10月までに30を超える県知事との話し合いを持ち、今日はその一環でもある。京都市においても厳しい環境はあるが、差別を解消するためには、先頭をきってがんばっていくという決意が明らかになることをお願いする」と述べました。

 

 

 次に、京都市側紹介があり、代表して寺井正文化市民局長が「事前登録型本人通知制度は昨年6月に制度ができて、まさにこの場から全国に広がっていっているが、まだ課題もあり、協議を重ねて改善していきたい。また、今年同対審答申50年ということで、引き続き人権侵害を許さない、全ての人の人権が尊重される京都をめざしていく。水平社宣言とその関連資料のユネスコ登録が叶わなかったことは、本市としても残念だが、水平社の精神が多くの方々の共感を得たと思っている。この成果を土台として人権教育、人権施策の推進に取り組んでいこうと考えている。本日はしっかりと意見交換を行い双方にとって実り多いものとなるように」と挨拶しました。

 

 続いて、菱田直義事務局長から、市協要望書の読み上げがあり、寺井局長へ市協要望書と、府連からの「同和対策審議会」答申50年にあたっての要望書が手渡されました。それを受け寺井局長が「安心・安全の社会をつくっていくということは、共通の目標である。また、庁内には各部署が連携し、調整して施策の円滑、総合的な推進を図っていくことを目的として人権文化推進会議というのを設けている。それを中心として、関係部局間で緊密な連携をとると共に、人権行政を推進する任務を持った人権行政推進主任を、各局・区役所に設置し、人権を大きなキーワードとしてあらゆる施策を推進していくという体制を構築している。本日受け取った要望書は、このあと所管の部署から回答、説明をするが、京都市全体として受け止めたいと考えている」と再び挨拶し、退席しました。

 

 

 8つの要求項目にそって論議が開始され、まず、事前登録型本人通知制度について、登録者数が1020人ということで、まだまだ少ない現状について問いただしたところ、地域自治推進室の永田彰市民窓口係長が「不正取得の防止と同時に知る権利の保障という観点からも、できるだけ多くの方に制度を知ってもらい登録してもらうことが重要だと考えている。チラシや市民しんぶん等で広報を行った。先日、京都府を通じた周知用のポスターを各区役所に掲示している。職員研修については、係長研修、初任者研修等でも伝えているが、全ての職員が理解し対応できていない現状もある」と述べ ました。宮崎議長から「1000人超というのは決して多いことはない。問題は登録に行ったら係長や課長しか対応せず、窓口係員は全く対応しない点にある」と指摘があり、「人権文化推進会議」や各区の人権推進主任である「区民部長会」で問題意識を共有するなどの取り組みは行われず、人権という大きな枠組みとして議論するには至っていたい現状が明らかになりました。安心安全の立場から人権を守るという視点であれば、単に「市窓」の問題だけでなく全庁関連する場所で周知していくことを要望しました。

 

 次に「差別事象に係わるガイドライン」について、各局が特に重要であると判断した事例だけが、人権文化推進課に集約されている現状が、市協による4回の情報公開請求による指摘により、一定改善されたことが 人権文化推進課の喜多村正一担当課長より報告されました。各局が落書き等についても人権文化に報告を上げ、また情報保管についても統一的改善がされているのであれば、今後の手引きとしてやはりガイドラインは見直されるべきと指摘しましたが、これからも運用面でやりきれると答弁したこともあり、今後の継続した議論することとしました。

 

 また、昨年1222日に議会で可決されたヘイトスピーチ被害に対する意見書を受けた行政の対応について、国際化推進室の阿嘉了道担当課長は、「京都市は昭和53年に世界文化自由都市宣言を制定し、都市の理想像を掲げている。今年6月、法務省をはじめとする関係省庁にヘイトスピーチに対して法による対応も含めた、実効性のある対応を要望した」としたが、西島委員長は、他の自治体レベルでは先行した条例作りや、施設使用の制限などが行われている現状において、観光都市であり世界の玄関口である京都市も率先して取り組むべきと訴えました。

 

 次に、徳永博己障害保健福祉推進室企画課長より「障害者差別解消法」の施行に当たっての京都市の取り組みについて説明があり、「20164月の法制定に向けて、全庁横断的に職員対応要領や事例集を配布し参考テキストとする。また相談事例の情報共有や関係機関の取り組み推進のため『障害者差別解消支援地域協議会』について既存の『京都市自立支援協議会権利擁護部会』にその機能を 付加する形で実施する。『障害者相談等調整委員会』については府条例に基づき、京都市の事案であっても府の調整委員会においてあっせん、助言を行い、京都市で個別事案解決のための調整委員会を設置する予定はないこと」を述べ、宮崎議長は「今の段階でその対応では遅いのではないか。権利擁護部会では当事者の声がしっかり反映されるのか」と問うと、「個別事案は府」とするに留まりました。主体的な取り組みの推進を要望しました。

 

 住宅の課題としては、野村暢すまいまちづくり課長は「市営住宅ストック総合活用計画」の推進にあたり、不正常な土地所有実態の解消については、相続人の確定、丁寧な説明等、かなりの時間がかかっている。活用が想定される優先度の高い敷地から一日も早く解決していきたいとしました。また、改良住宅の入居者承継問題について、 伴信之住宅管理課担当課長は、1年という同居前提を緩和するのでもなく、入居承継をするのでもない「介護同居制度」を検討してきたとしたが、「そんなことを要望してきたのではない。同居実態があったうえで手続きが後手となり、予期せず早くに親が亡くなってしまったというケースについて、柔軟に対応できないか、という問題提起だった」と反論し、「家を二つとも失って住宅難民になっている人を救う方策」について問うた。「昨年からの課題であり、反故にしてきたことは納得できない」「まじめに、住宅を返して手続きを踏んだ人が割を食うようなことでいいのか」「どう検討したのか」「何のための福祉行政か。無慈悲に出て行けとよく言えるものだ」と口々に反論しました。議論の視点が違う説明に翻弄される形で、次回、正面から論議する場を設ける必要性が確認されました。さらに、店舗付き改良住宅の空き屋問題についても、「シャッターが降りてるのはさみしいが、まだ具体的には進んでいない」との回答で、私たちの提案に対して真摯に対応する姿勢がなく、バリアフリーに関する進捗についても改良住宅のエレベーター設置率は一般公営住宅に比べても低い比率に留まり、お年寄りが安心・安全に暮らせるように、特に予算要求してもらうよう要望しました。

 

 最後に「こどもの貧困対策推進法」に関する京都市の取り組みについて、塩山晃弘地域福祉課担当課長と菅野明宏学校指導課担当課長が、「子ども未来はぐくみプラン」に基づいた説明をしました。特に一人親家庭については支援センター「ゆめあす」で対応するとしましたが、基本的に「次世代育成対策支援事業」というワークライフバランスを主眼とした法律を根拠としていて、今回の貧困対策としては、滑り落ちる家庭があるのではないか、世帯収入が200万円以下の世帯をどうするのかと問題提起しました。「例えば貧困対策において住宅問題は大きな課題であるが、都市計画局との連携はあるのか」との問いかけについて「特にしていない」とのことでした。教育についても「子どもの貧困対策」は「同和教育」そのものであり、有効かつ重要な政策だと主張すると、菅野課長は「中間層だけでなく対応している」としましたが、「放課後学びにどれだけ行けているのか。しんどい家の親がそこに行くように言えるのか」とフロアからの問いかけもありました。

 

 最後に府連平井斉己書記長が「部会でもう少し、議論を深めていればと思った。教育・福祉・住宅が所管する課題だったが、横の連携ができているかというと疑問であり、かつて特別対策が終わるときに、京都市は一般対策に移っても人権問題については引き続きやっていくと約束したと思う。それが履行されていないというのが私の感想であり、今日の課題はしっかり窓口で調整し、各部局横の連携を持ってさらに、議論を煮詰めて頂きたい」と述べました。中島英明人権文化推進課担当課長は、「一般施策に移行しても同和問題がなくなったわけではないことは、冒頭局長が申し上げたとおりである。今日、宿題になった課題については今後も部会の場でしっかりと意見交換、協議させていただきたい」と挨拶し、閉会しました。