京都市との意見交換会を開催

 

 

 

 

 11月17日、職員会館かもがわにて、部落解放同盟京都市協議会と京都市の意見交換会が開催され、京都府連、京都市協の役員、各支部役員など22人が参加しました。

 菱田事務局長の司会で開会し、役員紹介の後、宮崎茂市協議長が、「第48回全国研究集会には、市長の出席をはじめ、協力をいただき感謝している。6月に事前登録型本人通知制度ができたが、先進的と思われていたところ、他の自治体でもつくられていく中で、改善点も見えてきている。これからも登録数を増やしていけるよう協議をしていきたい」と挨拶し、続いて西島藤彦京都府連委員長も全研への感謝と、府連として府内各市町村に統一要求項目を提出していること。ヘイトスピーチの法規制については国会でも論議されているが、差別を許さない行政をすすめてほしいと述べました。

 続いて、京都市を代表して平竹耕三文化市民局長が「全国研究集会の成功は日頃の活動の賜物だと思う。しかし人権に関しては、ヘイトスピーチやインターネットの書き込み等新たな問題も発生している。市民の生活を預かる行政として人権文化推進の次期計画について明日からパブリックコメントを募集する。有意義な意見交換をしていきたい」と挨拶しました。

 

 

 

 

その後、菱田事務局長が要望書の趣旨説明を行い、宮崎議長が、市協要望書と府連要求書を平竹局長に手渡しました。局長は「人権尊重という目標は共通と考えているので、真摯に受け止める」と延べ、その後退席しました。

 さっそく9つの要求項目に従って、論議が開始され、まず、事前登録型本人通知制度について、根来正宏市民窓口企画課長が「登録制度ができて、まもなく半年が経過し、課長会、係長会で研修を行ったが、各区各支所において対応に差異があるのは事実だ。また、市民に対する周知も充分に浸透しておらず、市民新聞などの活用、登録申請書の折り込みなどに積極的に取り組みたい」と述べました。宮崎議長が「DV被害者などについては、事前登録できるようにしてはどうか。現在、登録数は600人強であるが、どう評価するか」と問い、根来課長は「生命を守る重みについてスピーディに検討したい。600人という数は少なく、桁をあげたい」と回答しました。

 次に、差別事象に関する情報公開制度で、公開が黒塗りであったことについて、喜多村正一市民啓発担当課長は、「市民啓発を目的として保管しているので、不必要な情報は黒く塗っている」と述べたことに対して、記録として隠蔽してしまうのではなく、公開に際し条例に照らして黒く塗るべきだと返し、差別落書きは単なる器物破損としての処理では済まず、人権侵害であり、それをさせない努力も大切と訴えました。

 また、差別事象に関連して、ヘイトスピーチに関する京都市の対応、特に観光都市・国際都市を標榜していることとの整合性についての問いかけは、阿嘉了道国際化推進室交流推進担当課長が回答しました。「京都には外国籍市民は4万人おり、多文化が息づくまち京都として、政府に必要な対策を求めていきたい」と述べ、「公共施設の使用に関して制限することはできないのか」という質問には「どういうあり方があるか、研究したい」と述べるに留まりました。参加者からは「現行法が使えないのであれば、国に働きかける、市長に進言するなど、差別をなくす先進都市として踏み込んでほしい」と積極性を求めました。

 文化市民局の関係者が退席し、次に住宅室関連として、ストック総合活用計画、住宅の家賃値上げと継承問題について意見交換しました。不正常な土地所有実態がストック計画を阻害している問題については、野村暢すまいまちづくり課長が、市内7地区26筆のうち、3筆について移転手続きができたと報告がありました。残り23筆についても相続人にあたり努力しているということですが、問題の困難さが浮き彫りになっています。

 家賃値上げ問題については、町内にチラシをまいて周知したとのことだが、読み書きが困難なお年寄りが多く住む「改良住宅」で、そのような対応では全く情報が行き渡らないとの指摘がありました。また、利便性をポイント化して、他の公営住宅と一律に値上げをするということは、改良住宅の歴史的経過からして適切なのかどうかとの厳しい質問がされました。同様に、住宅の継承については、5年前の「総点検委員会」での指摘をうけて4年前から、親族といえども同居1年を条件としたとの伊藤誠司管理運営担当課長の説明に、「家賃値上げの周知と同様、そのことを知らない住民がほとんどだ。もともと自分たちの土地を提供したのだという思いが強く、機械的な対応では納得ができない」等、意見が述べられました。

 終盤になり、障害者差別解消法の施行を来年4月に控え、京都市の取り組み情況を徳永博己保健福祉局障害保健福祉推進室企画課長に問いかけました。差別や禁止の定義が、京都府の条例では概要しか出ていないので、今後検討する。リーフレットも府のものを利用しているなど、京都市独自の主体的取り組みがほとんどされていない実態が明らかになりました。「まずは、法律の理念や趣旨も含めて、京都市の職員にこそ研修・啓発が必要なのではないのか。民間は努力義務であるが、公営施設はそれでは済まないことを自覚しているのか」との指摘がありました。

 最後は、昨年6月に成立した「いじめ防止対策推進法」にもとづく体制の整備、研修、取り組みの現状と、貧困の連鎖としての子どもたちの教育をめぐる環境に対して、支援のあり方を、冨田智晴教育委員会学校指導担当課長と井上浩史生徒指導課主席指導主事に問いました。いじめ対策については、国の指針よりも踏み込んだ、より主体的な対応をしている。放課後まなび教室を通じて、地域・PTA・学生等の協力で「自主的な学びの場」を提供していることなどが報告されました。

 少ない時間の中で、盛りだくさんの課題が浮き彫りになった意見交換会でしたが、方向性を共有しながら、今後、市協主催の解放学校や部会などを通じて、より細かい学習と議論が積み重ねられていくことが確認されました。