市協まちづくり部会ー建て替えをめぐって

 

 

 20191011日、京都府部落解放センターで市協まちづくり部会が開催され、市協各支部より12名が参加し、京都市からは都市計画局住宅室より、篠原誠一郎すまいまちづくり課長、竹林哲建築計画担当課長が説明をおこないました。

 冒頭、宮崎茂市協議長が挨拶し、「改良住宅の建替えがいよいよスタートラインについたということであるが、地元で準備できるかどうか差がある。まちづくり部会は、1年前には財政不足のため、建て替えには民間活力も使わざるを得ないという方向の話がされたが、今回、公費を投入して進める方向に舵を切ったということで、その経過と今後どうしていくかという考え方を聞かせてほしい。地域共生社会の実現と言われているが、上からの掛け声に終わらず、地元、地域のまちづくりにおいて具体的に実現していくことを念頭に置くことが大切だ」と述べました。

 続いて、篠原課長が以下のように説明をおこないました。

「昨年、セーフティネット法の改正にともない、国からの補助金が半分ほどあり、市営住宅の管理にかかわる補助金のメリットから、八条団地で民間活用での建設をおこなったが、担当が調査した結果、改良住宅の改善事業補助率は3分の2であることから、従来手法がベストであると判断した結果である。

 2011年に京都市市営住宅ストック総合活用計画が策定され、楽只、崇仁、鈴塚、八条の団地再生や山ノ本市営住宅をはじめとした耐震改修などの住宅整備に努めてきたが、浴室設置、エレベーター等、かなり当初の計画より遅れているのが現状。計画は10年を目標としており、2021年には、これまでの事業を引き継いだ次期ストック計画を策定していく。

 一方で、昨年12月、京都駅東南部将来ビジョンにかかわり、総合企画局と都市計画局すまいまちづくり課の両者が市長ヒアリングをおこなった席で、市長は4団地(養正、錦林、三条、壬生)の団地再生を早急にすすめるべきであるとの強い意向を示した。そこでプロジェクトチームを発足し、この6月に素案をつくり、7月にさらに市長ヒアリングを終えたところだ。まだ中身としては本当にざっくりとしたもので、今後工期・工費を算定し設計依頼することになり、そこまで行ったら事業は確定する。しかしまだ基本設計予算を要求している段階であり、何とか4つの地区で実現していきたいのでそっと見守っていてほしい。市長査定の最終内定が来年1月、2月市会の予算議案であがっていく。

 楽只が一つのモデルとなっているので、参考にしていただきたい。団地再生はこの9月に住棟建て替えなどの住環境が整ったが、それに約10年かかっている。まずは、住民の方々のための住環境整備を行ったということで、決して事業が終わったわけではない。公共マネジメントを兼ねたビジョンは余剰地利用の議論も含めてこれから協議を進めていく。

 団地再生すると言っているが、改良住宅の場合、集約棟と継続活用棟がある。しかし調査をしてみて、はじめてわかることもあり、継続活用ではなく新築を建てた方が安価な場合もある。補助金適正化法があり、安易につぶすのは補助金返還というリスクを受けるので協議は必要である。しかし例えば楽只10棟、11棟同じレベルだったはずだが10棟のレベルが悪かったので除却して11棟だけ継続した。ほかの団地についても同じことは十分言えるのでしっかり協議する。」

 続いて宮崎議長から各支部のまちづくり組織などの体制や地元協力についてそれぞれ質問がありました。

  まずは、田中支部から村上支部書記長が「養正地区では元々YTの会と田中まちづくりの会があり、元全解連の会長が両方の会長を務めていた。田中支部においても両会に参加してきたが、昨年会長が亡くなったため、協議の上それぞれ別々の会長を定め、田中まちづくりの会では自分も窓口である事務局長を務めている。現在は,養正学区や近隣の自治連合会とも連携をとっており、大きな事業計画などの場合は参加して貰うようにしている」と説明。

 次に千本支部では、小林支部長が「楽只では、じうんというまちづくり組織を立ち上げ、学区,自治連合会も参加してもらってまちづくり協議を進めている。住民と行政の間に立ち、様々な課題解決に向けて推進してきたと思っている」と述べました。

 さらに、東三条支部の状況について北村支部書記長が「まちづくり組織はあるが、地元としてはまだまとまってはいない。収入のある若者が地域から出ていく。建て替えても住む人間がいなければどうするのかという意見もあり、戻る方法について提案がほしい」と意見がありました。

 これについて、部会の後半は様々な意見が出され、今後の課題とされましたが、出された意見の要点は以下のとおりです。

・改良住宅は、一般の公営住宅と違って高額所得認定を受けることで出ていかなければならないことはない。住みたいという意思があれば住み続けることは可能である。

・従前居住者という考え方は、改良住宅がもともと家を所有していた人から買い上げて、その土地に建てた公営住宅だからである。

・これまでの部会の議論を通じ、介護3以上の親元にもどって同居した場合、親が亡くなっても継続して住むことが可能な条例改正は行われている。

・公募に関していえば、千本地区では9月に従前の居住者がやっと全部入ったという段階で、これからさらに30戸くらい一般公募していこうということだが、千本でもやはり、地区には親がいるから親の近所に住みたいと言っているものもいる。反対に娘が改良に住んでいて、親が昔家を買って出ていったが、高齢となり連れ合いが亡くなり、娘の近所に住みたいと言っている者もいる。募集は一般公募となるが、地元の希望に配慮する方法がないかとは思っている。

・コミュニティバランスの特別入居等、一般にある手法をうまく利用できないだろうか。

・様々な議論から近居入居制度を構築した。一般募集と、コミュニティミックス、介護子育て支援制度、という考え方である。

2014年くらいまでは、楽只と養正は一般公募していたがほぼ「戻り入居」というのはなかった。現在久世も辰巳も公募しているが、年に1件あるかないかという状況である。

・市営住宅に特化して、住み続ける、戻るという話をするのではなくて、「土地を売るな」というなら、定期借地権住宅で民間住宅を建ててもらうとか、逆に、コーポラティブ住宅を建設するとか。そうすれば収入階層関係なく賃貸で住むことは可能。様々なアイデアを出し合うことが重要。

・市営住宅は生活に困窮している人が基本的に入る制度であり、もう改良事業は終わったので、公営、市営住宅としてどう考えていくかという話になる。例えば二条市営住宅は、11階建ての半分、5階以下は市営住宅、6階から上は公社の運営で、細かい入居条件はないという建て方をしている。

・千本の場合ハード面の整備に10年を費やし、今やっとスタート地点に立ったところだ。市内の他の地域はまだスタート地点の手前であり、それ以降の地域のありかたを一定、念頭におきながら、次世代にしっかり引き継いで考えていくべきではないか。

 こうした論点をふまえ、宮崎議長が「市営住宅は、基本的に高齢者、母子家庭や障害のある方など、福祉を必要としている人が入居する。だからこそ『福祉で人権のまちづくり』が必要であるという考え方もある。次回また、入居をめぐる、ソフトの分野についてはやっていこう」と述べ、篠原課長は「今回4団地をするということだが、我々は、それで終わらせようとは思っていない。この基本設計の予算がついて、4団地が前に進めば、並行して改進、辰巳、久世などの地域についても、しっかりと考えて進めていきたい」と述べました。

 最後に「我々とすれば、20223月の水平社100年という節目がある。それまでに各地区のスタートラインが見えるように、がんばっていきたい」と議長が抱負を述べ、閉会しました。