左京西部いきいき市民活動センターを訪ねて

 

聞き手 m:宮崎議長

話し手 s:杉山 準 センター長

 

m:今日はよろしくお願いします。さっそくですが、私たち京都市協の間でもこの左京西部いきセンの指定管理を「劇研」がすることになったとき、「へえ、どんな団体?」という声が多くあったので、簡単に団体の自己紹介をお願いしたいのですが。

 

s:劇研というのは、もともと1980年代に左京区の下鴨に個人のお家を改造して劇場をつくり(当時は「アートスペース無門館」といいました)、主に若手の演劇やダンスをする人に使ってもらおうと運営し始めたのが最初です。95年にオーナーがその劇場を閉めかけたんですが、スタッフ達がこういう場所は継続したいということで96年に再出発し、その時にその劇場を「アトリエ劇研」と改称しました。2003年にNPO法人にしまして、その法人が劇場を運営する現在の形態になりました。ですので主たる目的は文化の振興ですね。演劇を使ったまちづくりや、教育との連携など、文化を社会の中に広めていくという活動をしています。

 

m:今回14カ所で募集がかかってたと思うんですが、この田中地域を選んだというのは、何か地域的な思い入れなどがあったんでしょうか。

s:下鴨に近いということもあったんですが、文化はやはり人間とは何かというところに通じるところがあって、例えば演劇でも、作品テーマの中には、人はどうして人を蔑むのか、差別するのか、どうしてそうしてしまうのかなどを鋭く見据えた作品もあります。芸術(アート)には固定的なイメージを変えたり、いわゆる偏見、思い込みや刷り込みを変換する力があり、また、人を寄せるという力もあって、催しをやると人が寄ってくる。文化による地域づくりという中で現実的な方法として役立つんじゃないかと考えていたんですね。ウチがここを管理するとなっても、そんな大層な、ガラッと変えるということはないんだけど、何かじわじわと敷居を和らげていくことができたらいいなと、それこそ文化が役立てる一つの手法になるんじゃないかと、そういうことを夢見て応募したというのが動機なんですね。

 

m:いきいきセンターとしては、地域の活性化のためにということが大前提にありますし、芸術文化を通じて、ちょっとその敷居をやわらげたいと。私はそういう気持ちを持ってもらっているというのは、それはうれしいですよ。

 

s:まさに、ここをただの貸館としてその業務を淡々とやっていくというだけじゃなくて、同時に地域と関わってそこでやっていきたいというのは最初からの思いだったので。

 

m:今メンバーは何人くらいいるんですか?

 

s:会員数は今40人弱くらいです。NPOなので会員が支えています。スタッフは30人前後です。劇場を運営するということで、照明、舞台、美術などの技術スタッフが多いです。

 

m:去年4月からスタートして、いろいろな計画があって進めてきたと思いますが、予想通りに進んでいますか?

 

s:結果から言うと、だいたい計画通りだと思います。わたし達は先ほどの話にもあったように、ここに新しく入ってきた人間なので、私たちがどういう人で何をするのかというのが、おそらく地域の人達にとっても問題だったんじゃないかと思います。そこでいかに地域の人と交流していくかというのが最初の課題で、初年度の目的でした。昨年行った自主事業や通信の発行などを通じて、少しずつですが交流も生まれて、1年目としては上々ではなかったかと思っています。

 

m:長年地域住民が頼りにする施設で、行政は生活相談をしていたわけですが、その名残というのはありますか。

 

s:それはありますね。ただ毎日何十件とあったら対応できないかもしれませんが、そんなに多くはありませんので、できるだけ対応しようとしています。お年寄りのお家にまで行って、テレビを直してあげたこともありますよ。

 

 

m:課題や問題点があったら教えてほしいんです。例えばここは2階ですよね、そうしたら元気な人対象で、障害のある方はあらかじめ来られないですよね。それに対して「来れない」という声があるとか、あるいは防音とか音響の面など。

 

s:正直やはり2階にあるということで、高齢者や障害者が立ち寄りづらいということはあると思います。上まで上がってくるのはしんどいわ、という声をお年寄りから聞くこともあります。ウチは演劇やったりする利用者が多いので、そうすると、足踏みならしたりとか、大きな声で叫んだりして、近隣に迷惑が掛ったり。ここは下が保育所なのでね、逆にウチが迷惑かけているかもしれません。

 

m:それから高齢者サロン(福祉センター)の利用はどんな状況ですか。

 

s:ここは、利用者が固定している傾向があって、そうなると新しい人が行きづらいという話しを聞いていました。そのあたりをなんとかしようということで、カラオケの設備があったので、(以前にしていた方々に)「しませんか」とお声がけしたら仲間が寄ってきたりして、利用者の幅が広がりました。ふれあいサロンはちょっと位置づけが難しい施設ですよね。お葬式とか法事とかが入ると、そちらが優先となるので、積極的に利用してもらうというより、日頃ここに通ってきてよくわかってくださる方を増やしつつ、そこがいい交流の場になればいいなと思っています。私達にとっても、ふれあいサロンでいろんな話を聞くことで、生の声が聞けて参考になります。

 

m:診療所と、ここと風呂ですわ。情報発信の場所は。

 

s:そうですね、風呂で何かしゃべればすぐに情報が広がるって伺って、掲示物も貼らしてもらってます。

 

m:貸し会議室は以前に比べて稼働率が上がっているんですが、どういった利用が多いですか。

 

s:うちが管理していることもあってか圧倒的に演劇、ダンスが多いんです。70%くらいじゃないですかね。で、多すぎるという問題もあるので、他ジャンルやお昼の時間帯の利用を増やそうとしています。昨年度はお昼間の時間に市民活動活性化事業で体験型のヨガ教室やりました。そこから、今年ヨガの自主グループが生まれました。

 

m:地域的にはどうですか?

 

s:そうですね、ヨガ教室などの例を見ても、区外から来られる方も多いと思います。

 

m:だいたい埋まってますか?

 

s:夜はだいたいほとんど埋まっています。お仕事が終わったり学校が終わったりして利用するので。昼は比較的あいています。

 

m:年齢層は。

 

s:年齢層は全部正確にはわからないんですけど、若い人が多いと思います。30代以下がやはり多いと思います。

 

m:それから地元との連携と言うことでまちづくり協議会がありますが、そことの連携というのはありますか?

 

s:まちづくりの会は、月1回クリーンキャンペーンで地域の掃除をされていて、去年からそこに参加させて頂いています。その日にあわせて野菜を売ったりもしました。有機野菜を販売したのですが、少し高いので小分けで安く売ったりして。こういう店をすると、顔を見て話をすることができます。それから、地域の閉まっている店舗も利用できたらいいなと思って、実は活用できる直前まで行ったのですが、今は少し頓挫している所なんです。ちょっとあせって、信頼関係が熟する前に進めようとしたのが失敗だったかもしれません。

 

m:いいなと思ってやっても信頼関係ができていないと、これ本当に大丈夫かと心配されることはありますね。最後に今後の抱負みたいなものを聞かせてもらえますか。

 

s:最終的には住みよいまち、良いまち。みんながここに誇りがもてる、暮らしやすいねと思えるまちになるような手助けができる施設でありたいと思っています。同時に、これは私の個人的な思いなんですが、芸術とか文化も安泰なぬくぬくとした場所に長いこといると、やっぱり腐ってくると思うんですよ。転がり続けていく、常に新しいことを考えて、動いていくべきだと思っています。私たちが働くべきタイミングというのがある気がしています。私達がここで働けるのは何かの縁で、かりにそれが上手くいったとしても、私たちがここに安住してしまうことを考えるのではなくて、さらに変わっていけるということを見据えて、働きたいと思っています。例えば私たちがやってみてうまくいった事があるとしたら、それを、違う団体とか違うグループが私達に代わってまちづくりをしたいというときに、そこに譲って自分たちは出て行く、というような流動性というか、固定化してしまわない気持ちを将来の展望として持っていたいと思っています。

 

m:私は文化とか芸術とか言う人には、すごいこだわりがあって、変えることはないと思っていたんですけど。

 

s:ハングリーさが本質をつく鋭い表現を生むエネルギーになるみたいな。そういうのがあるような気がするんです。

 

m:もともと芸能という分野で言うと、河原者と呼ばれた人達から始められた踊りや芝居があって、かつては被差別的な視線にさらされながら培われたという歴史があります。それが能や歌舞伎に進展して今は、伝統文化となっていたとしても、劇研はそういう意味で言うと、芸能の原点を大事にしていきたいという姿勢を持っていると感じましたが。

 

s:今、芸能人とかテレビなどをみると華やかなので、暗いイメージは感じませんが、基本は河原者だという感覚というのはすごく大事だと思っています。

 

m:今でも地域のお年寄りは、歌ったり踊ったりが大好きなんですよ。宴会でもすぐに踊り出したりね。

 

s:そうなんです。地域の芸能を残したい、もしくは地域の芸能を発展させるようなことができないかな、というのが夢ですね。

 

m:ウチの地域で言うと盆踊りですね。

 

s:盆踊りもね、復活させたいという声を聞くんですよ。もう何年前かに終わっちゃってると。

 

m:私からもまちづくりの会に声をかけます。昔やぐらを建ててた人も知り合いですし。

 

s:それはいいですね。ぜひ本当に早くやりたいです。踊りを教えるというのは異世代交流ですごくいいんですよね。楽しいですしね。伝えきれなくなる前に、復活できたら本当にいいと思います。

 

m:今日はありがとうございました。またこれからもよろしくお願いします。

 

s:こちらこそ、ありがとうございました。