東山いきいき市民活動センター 探訪

 

センター長:若生麻衣さん

聞き手:宮崎議長

 

M:各団体がどういった活動をしているのかを紹介する、探訪の5回目です。今日はよろしくお願いします。まずは、指定管理を受託しているNPOセンターの自己紹介をお願いします。

W:はい、伏見も同じNPOセンターなんですが、京都NPOセンターという、NPOや法人格の有無にかかわらず、特定非営利活動法人促進法という法律ができるかできないかという頃1998年に設立したNPO法人になりますね。行政や企業セクターではない第3のセクターとして、市民社会の実現を目指すというミッションで運営を続けている組織になります。京都市市民活動総合センターの運営に立ち上げ期から関わりまして、今は、指定管理2期目になりますね。そこでの実践ですとか、積み重ねてきたNPOや地域、行政との関係をここの施設の運営にも生かしたいということで、指定管理に至ったという形になります。

M:京都市の方も、当時のいわゆるコミセンを切り替えていく大きな、一つのひな形というのは市民活動センターでしたよね。その頭に「いきいき」をつけて、ブランチ機能を持たせる形でされました。ただ、ひとまち交流館でやる内容とちょっと、ここは違うと思うんですが、その辺りはどうですか。

W:やはり、市民活動総合センターといきいき市民活動センターは、同じ条例の下に運営されていますが、より地域に近い施設になるということを念頭に置いて、NPOの力づけをするという部分に加えて、私たちが目指す市民社会の実現において、地域との関わりは外せないなという考えに至りまして、ここの指定管理を受けたんですね。ここは東山のいきいきセンターになりますから、東山区域全体のまちづくりの活性化をするためにどうやって地域主体のボランティア団体、サークル、NPOと、行政・企業を含めた、私たちクロスセクターと言うのですが、今までの行政と企業だけのセクターではなくて、サードセクターが成長、発展するために、地域をベースにどういう事業を描けるのだろうということでやってきました。ただ、やはり、隣保館という存在が、長くこの東三条地域の人たちに、拠り所となってきた場所であるということも、職員がどんどん認識を深めていく、そういう1年だったと思います。実際、ここができる前に、京都市の都市計画が整備される途中の段階で、地域の方がここにお住まいだったんですよね。地域のためになるなら、ということで土地を明け渡して、これは皆さんご存じだと思うんですが、親の代でそういう決断をして、市営住宅に入ったという、息子さん、娘さんたちがユーザーとして現に使っているという中で、やはり東山区域のまちづくり全体を考えるという私たちの方向性に加えて、ここの地域との関係性というのを大切にしていきたいな、という思いも同時に持っています。

M:京都市が昨年4月にちっと地元に周知をできないままスタートして、混乱があったようなんです。以前の館長さんのところにも、住民から電話がかかってきて、鍵がかかって家に帰れないとか相談されたと。ここに来たら何とかしてくれるという思いがあるからね。

W:そうなんです。ここに来たら、困りごとを解決してくれるという、そういう施設だったので、それを求めてやってくる方が、当初はたくさんおられて、それを「いや、ここ役割が変わったので、ごめんなさい」というだけが、私たちの仕事じゃないという思いがありましたので。それはどういうことかというと、私たち住民が主体となってまちづくりをするということを目指してますので、さまざまな相談事のなかに、まちづくりの課題や種があるんだという思いで対応させてもらったり、関わりを持たせてもらっています。ここは、配食サービスで、東三条希望の会がご利用されていたり、診療所もありますので、そこの先生にお話を聴きながら地域の福祉をめぐる状況とか、高齢化でこれから福祉という部分がここの地域にとっては大切になっているんだということを勉強させてもらっています。どうやって、事業を通じて、あるいは、ここだったらいつ来ても、時間が過ごせる場所だという認識を、もう一度地域の人に持ってもらえるかというところで、事業作りをしています。

M:けっこう利用者が多い中で、よく切り回しをしているなと思っています。去年、交流事業ではいきいきコンサートをしていますよね。

W:はい、子どもたちが関わってくれたコンサートですね。

M:ちょっと今年は余裕ができた感じですかね。

W:いやいや、余裕はないですよ。日々、運営していく中で、課題はたくさんありますので、一つ一つ解決しながら中長期的な目標に向けて、私たちが今やっていることが、はたして、前に進んでいることなのかと考えながら。

M:当初、地域の関係に悩みがあったなかで、教室、講座事業とか、市民活性化事業、計画通りすすみましたか。

W:活性化事業に関しては、去年上半期は、正直一つも手がつけられなかったんです。やっぱり地域との関係を構築したり、ここの施設の運営に慣れることで精一杯だったんです。ここ、広いんですよね。学校並みの設備があって、ただ、この設備が、利用者にしたら、使いやすいというのですよ。自分たちだけが使ってるんじゃなくて、廊下を歩いているといろんな音が漏れてきて、それをうるさいという苦情がないんですよね。みんながんばってるんだなという。後半にいくつか活性化事業をしまして、前期にいろんな、東山のまちづくり、活性化というのを主体にして、もう一つはコミュニケーションという部分に注力して事業展開しています。映画の上映会にしても音楽を一緒につくるというワークショップにしても、写真展にしてもこの地域にお住まいの方に何らかの形で関わってもらいたいなという思いで、その地域の方と外から来る利用者の方が接点を持てるような事業を展開をしていきたいと。成功か失敗かというと、うまくいった方だと思うんですが、逆に1年目の事業を通じて、2年目の課題といいますか「もっとこうしたらいいんじゃないか」という改善点も見えてきました。

M:活性化事業って、切り口でやり方が違うので、○や×や、100点や0点ってないんですよ。

W:ないんですね。やってみたら、それぞれがおもしろい展開になっていって。

M:自分のとこ何とかせなあかん、と思いながら、あ、あそここんなことしてると、指定管理者同志のいいところお互い学ぶことも大切ですね。

W:だから、ここも利用者が増えるということは、ただ業務が増えるということではなくて、財産が増えると考えるようになったら、目線が変わってきましたね。今年は、スクラップブックづくりという事業をはじめまして、ここの地域の高齢者中心の話を聞いていると、子どもも高齢者もそれぞれ家族や友達の関係とか、自分が働いて生きてきて、今老いている生活を振り返って、たくさん物語が出てくるんですよね。

M:たくさん参加されているんですね。

W:そうなんです。これ、定員15名なんですが、いつも満杯で。ひらがな子どもバージョンと大人バージョンのチラシをここの市営住宅も11軒まわりました。「参加しませんか」と言うと、「あんたら何やってんの」とか、「そんなんやったら行くわ」とか。これをきっかけに、たとえば高齢者サロンを運営しているんですが、「あそこって今どうなってるの」とか「行ってもいいの」という、一人で暮らしている人の声も聞けるんですね。活性化事業というのは、事業そのものに価値があるという部分もありますけど、そこで、宝探しを重ねているんだな、という思いでやってますね。もう一つ今進んでいるのは、スモールオフィスに入っている団体、今6団体あるんですけど、3つは環境保全をしているんですね。中庭を開放して、子どもたちと一緒に植木を植えたり、種まきをしてもらったり、話をしてもらったり。今まで、中庭は、外から眺めるだけの場所だったのですが、そこを開放して土とふれあってもらうと、楽しいようです。

M:そういった子どもさんのお世話も、ここの職員の方がしているんですか。

W:私たちは、お世話をするという感覚はなくて、実は、ここを訪れる子どもさんは、東三条地域のこどもだけでなく、小学校が統廃合されて、開晴小学校になってるんですね。子どもたちが、自分たちで遊びをつくったりしますね。スリッパピンポンを自分たちでしたり、スチールの棚をネットにしたり。そういうのを見ると、ちょっと、こうしてみない?というと、自分たちで遊びを創り出すというようなこともできるのではないかと思っているので、世話しているという感覚はないですね。

M:課題や問題点があれば、ということなんですが。施設面などはどうですか。

W:ここは、建てられてから20数年が経過しているんですよ。あちこち修繕が出てきています。水回り。この間は3階の床板が抜けて、その都度対応すると修繕費もかかってきますよね。想定外のことが修繕に関しては多いですね。

維持管理は大変です。空調だけでもすごい費用になりますしね。

M:昔の施設だから、一つスイッチ入れたら、空調も全室に入る。

W:集中管理なんですよね。だから難しいですよ。本当に。それでなくてもNPOセンターって、環境保護のために、省エネを徹底してやってきた組織だったので。

M:最後になるんですが、今後このセンターを進化させていくという方向性について聞かせてください。

W:私たちやっぱり、外から来た団体という自覚を持っていますので、地域との信頼を築いていくというのが一つだと思います。東三条地区だけでなく、東山の人と信頼関係を築いていくということ。限られた人員ではありますけども、どんな人が住んでいて、どんな生活を送っているのか、商いもふくめてね。地域資源を生かしていく。ここの地域の方々にとっても、外からの利用者というのは今はまだまだ遠目から見ていただいてると思うんですが、事業を通じて、あるいは団体さん主催の事業に地域の方が参加できるような事業を増やしていって、出会いとか交流の場をつくるというのが役割としてあるかと思います。市民活動といっても、まだまだ市民=住民というとらえ方をしていて、行政というのは自分たちの思いを実現してくれる公共の主体なんだという考えが主流ですね。自分たちが関わることで、地域も変わっていくんだという経験を一緒に積み重ねてもらうというのが市民活動センターの名前を掲げている私たちの役割かなという風に考えています。おそらくハードの充実がこれからの課題ではなく、ソフト面で充実させていって、これだけの人がこれだけの自治活動をしているんだという見せ方を考えて行けたらいいな、と思います。

M:そうですね。今日はありがとうございました。